2017 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析を用いたncRNA結合タンパク質同定技術の高度化とその利用
Publicly Offered Research
Project Area | Neo-taxonomy of noncoding RNAs |
Project/Area Number |
17H05610
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
足達 俊吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (90783803)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | RNA / RNA結合タンパク質 / 質量分析 / iSRIM / ChIRP-MS |
Outline of Annual Research Achievements |
多くのRNAは、タンパク質と複合体を形成して機能を果たすと考えられていることから、RNAの機能を分子的に理解するためにはRNAに結合するタンパク質を明らかにすることが重要である。本研究計画では、iSRIM法(in vitroにおいて特定のRNAに結合するタンパク質を同定する手法)及びChIRP-MS法(in vivoにおいて特定のRNAに結合するタンパク質を同定する手法)の両手法を比較しながら用い、特定のRNAに結合するタンパク質同定基盤技術の確立を目指すとともに、確立した技術を用いRNAの成熟過程、機能、制御機構の解明を目指す。平成29年度は、それぞれの技術の確立のために、特異的な結合タンパク質が知られている7SK-ncRNA、TNF-α mRNA、TFRC mRNAの3’UTR領域を用い、RNA及びその結合タンパク質の精製、質量分析による結合タンパク質の同定実験について、細胞の量、固定方法、細胞溶解液の組成、細胞の破砕方法、アンチセンスオリゴの種類等の条件検討を行い、プロトコルの確立を目指した。その結果、ベイトRNA特異的に既知の結合タンパク質(7SK RNAについてCDK9, CyclinT, Hexim, LARP7, MEPCE、TNF-α mRNAについてRC3H1/2やZFP36L1/2、TFRC mRNAについてIRP1/2等)が効率よくかつ特異的に同定される実験条件を見いだすことに成功し、実験プロトコルを確立した。さらに、レポーターRNAを用いたChIRP-MS法の開発を行い成功、レポーターRNAの下流に様々な目的RNA配列をつないだコンストラクトを用いることで、全く同じ実験条件のもと様々なRNAに結合するタンパク質を同定、ベイトRNA間で結合タンパク質の比較が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において平成29年度は、以下を達成することを目標としており(①CHIRP-MS法の洗練、②CHIRP-MS法の高度化(レポーターRNAを用いたCHIRP-MS法の開発)、③iSRIM法の高度化(酵素反応とのカップリングによる適用拡大)、④領域内共同研究を通した開発技術の有用性実証)、全てを達成することに成功、研究は順調に進捗している。具体的には、①ChIRP-MS法の洗練については、ChIRP-MS法についての実験条件の検討を行い複数のRNAについてその既知結合タンパク質同定を可能とする実験条件を確定することに成功した。②ChIRP-MS法の高度化(レポーターRNAを用いたChIRP-MS法の開発)については、Red fluorescentやNanoLuc配列の下流に目的のRNA配列をつないだレポーターコンストラクトを作成、Red fluorescentやNanoLucのRNA配列を標的としたアンチセンスオリゴを用いてそれぞれのRNAと共にその結合タンパク質を精製、質量分析を用いて結合タンパク質を同定する実験系を確立に成功し、また、この手法については、mRNA上にある合成中のレポータータンパク質(Red fluorescentタンパク質やnanoLucタンパク質)の定量が可能であり、レポーターmRNAの翻訳効率の定量化を行うことができることを明らかとしている。③iSRIM法の高度化(酵素反応とのカップリングによる適用拡大)、については酵素反応を組み合わせることでRNAと結合タンパク質に変化が起こりうることを確認することに成功している。④領域内共同研究を通した開発技術の有用性実証については、nRNAタクソノミ領域内の複数の研究者との共同研究を行い、複数のRNAについてその結合タンパク質の同定に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は順調に進捗しており、当初の予定通り以下について(①同定されたRNA結合タンパク質についての結合意義解析、②領域内共同研究を通した開発技術の有用性実証)研究を進める。具体的には、①同定されたRNA結合タンパク質についての結合意義解析においては、1年目に行った、7SK-ncRNA、TNF-α mRNA、TFRC mRNAの3’UTRに加え、2年目はその他の複数のRNAについてChIRP-MS法および、iSRIM法を用いた解析を行う。具体的には、ChIRP-MS法および、iSRIM法で同定されたタンパク質について、RNAの種類別、RNA精製の手法別に分類し、特定のRNAでのみ同定された結合タンパク質や特定の手法でのみ同定された結合タンパク質等、特徴的な結合タンパク質についてその後の結合意義の解析を行う。結合意義の解析手順としては、機能が明確でないncRNAについては、まずncRNAの機能を明らかとするためにncRNAのノックアウトやノックダウン細胞を作成、トランスクリプトーム解析や、我々の新生タンパク質定量解析を行い、ncRNAの下流で発現量が変化する分子群の同定を行う。次にncRNA結合タンパク質として同定されたタンパク質のノックダウンやノックアウトを行い、ncRNAの下流で発現量が変化する分子群についての定量を行い、その相関性を調べることにより、同定したncRNA結合タンパク質の結合意義の検証を行う。機能が知られているncRNAやmRNAについては、結合タンパク質のノックダウンやノックアウトを行い、既知の機能に対しどのような影響を持つかの解析を行う。また、②領域内共同研究を通した開発技術の有用性実証に関して、一年目に引き続き、領域内の研究者と共同研究を行い領域内研究者が研究しているncRNAについてその結合タンパク質の同定や、質量分析技術を用いた研究協力を行う。
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Research Products
(5 results)