2017 Fiscal Year Annual Research Report
上皮細胞集団の細胞競合による変異細胞排除における力覚応答の機能解明
Publicly Offered Research
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
17H05612
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大橋 一正 東北大学, 大学院生命科学研究科, 教授 (10312539)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 力覚応答 / アクチン骨格 / RhoGEF / 上皮細胞 / 中間径フィラメント / 細胞競合 / Solo |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、低分子量G蛋白質Rhoファミリーの活性化因子の中から力覚応答に関与するものを同定し機能解析を行ってきた。その一つであるSoloについて研究を進め、Soloが上皮細胞において張力負荷に対する収縮力の発生に寄与することをこれまでに明らかにしてきた。このSoloの細胞機能は、上皮細胞集団内に発生した異常細胞の細胞競合による排除に関与することが考えられた。本年度は、同領域の藤田班との共同研究を開始し、恒常活性型RasV12をイヌ腎上皮MDCK細胞において発現誘導し、任意の時期に正常細胞を変異細胞に変換させ、周囲の正常細胞との細胞競合によって変異細胞が頂端側へ排出される実験系の導入を行った。現在、RasV12の発現誘導による変異細胞の排出を再現できるようになったが、まだ効率が低いためさらに条件検討を進めている。本研究において、細胞間に作用する張力を生細胞においてリアルタイムで可視化することが非常に有効な解析ツールとなるため、細胞間の張力を蛍光輝度の変化で可視化するテンションセンサープローブの開発を開始した。E-カドヘリンの内部に円順列変異体YFPを挿入したプローブの発現プラスミドを作製し、これを上皮細胞に発現させた場合、細胞間接着部位に発生する張力がこの円順列変異体YFPに働くことが期待されるプローブの基本骨格を作製した。これをもとに円順列変異体YFPの張力の作用する領域に点変異を導入し、細胞間の張力変化で輝度が変化するプローブのスクリーニング系を確立した。現在、スクリーニングを進めている。また、Soloによる力覚応答のシグナル伝達経路が細胞競合に寄与することを考え、Soloと相互作用する蛋白質の網羅的探索を行った。その結果、アクチン重合に寄与し中間径フィラメントと結合することが報告されている分子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同領域の藤田班との共同研究により、薬剤の添加で恒常活性型RasV12を発現誘導可能なMDCK細胞をMDCK細胞集団に少数混合し、正常細胞に囲まれた変異細胞を人為的に作製するモデルを導入した。細胞競合によって変異細胞が細胞シートの頂端側に排出され現象を観察できるようになったが、効率が低いため、更なる条件検討を行っている。同時に、これらの細胞においてSoloの発現抑制の効果がこれまの解析と同様に検出できるかを検証している。本研究課題の重要な柱であるテンションセンサープローブの開発に本年度は注力してきた。このプローブは、細胞集団の秩序化、細胞競合における力覚応答の機能解明に非常に有効なツールとなることが期待される。細胞間のテンションセンサーとするため、E-カドヘリンをベースとして、E-カドヘリンの細胞外ドメインに円順列変異体YFPを挿入し細胞内にRFPを付加したプローブの基本骨格を作製した。さらに、円順列変異体YFPの張力が作用するドメインに点変異を加えたプローブの検証を開始した。同時に、現在、プローブのスクリーニングの効率化を検討している。 これまでにSoloと相互作用する分子としてケラチン8/18繊維を同定していたが、細胞競合における正常細胞側の異常細胞の認知機構、異常細胞が排出される分子機能の理解には、細胞間接着やアクチン骨格の再構築に関与する分子の同定が有効と考えられた。そために、ビオチン化酵素を用いたBioID法を新たに導入してSoloと相互作用する蛋白質の網羅的探索を行った。その結果、アクチンの重合に関与し中間径フィラメントと結合する分子や接着斑において力覚応答に関与する分子を幾つか発見した。これらとSoloの相互作用の確認とともに、さらに多くの分子を同定するために新たなBioIDプローブの作製とスクリーニングを継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.MDCK細胞の細胞競合モデルにおける細胞骨格の動的状態の解析:細胞競合のモデル実験を早急に確立すると同時に、アクチン骨格やケラチン8/18ネットワークを可視化できる細胞株を樹立して細胞競合の実験で使用できる条件を整える。これらを用い、細胞競合時にこれらの細胞骨格の再構築パターンを解析する。 2.YFPの円順列変異体を用いたテンションセンサープローブの開発:テンションセンサープローブの母骨格が完成したので、センサーとして働く円順列変異体YFPに対する点変異体のライブラリーを作製しスクリーニングを継続する。また、センサー部分である円順列変異体YFPのN末端と C末端にタグを付加した分子を作製し、その両端をシリコーンゴムに直接強固に結合させ、シリコーンゴムを引き伸ばして円順列変異体YFPを引き伸ばす実験方法を確立する。これを用いてセンサーとして有効な候補を簡便にスクリーニングする方法を確立する。また、Soloの細胞間接着部位への局在は、細胞がその部位で収縮力を発生させている可能性が考えられるため、Soloそのものがテンションセンサーとして機能する可能性を検証する。 3.細胞間接着部位においてSoloと相互作用する蛋白質の探索:大腸菌由来のビオチン化酵素を用いたBioID法によるSoloの関連蛋白質の探索はこれまで行ってきているが、細胞間接着構造に特化して関与するものは未だ同定できていない。さらに探索を続け、得られたものの中でアドヘレンスジャンクションやデスモソームに関連する分子をピックアップして細胞競合における機能を解析する。 4.細胞競合における力覚応答に関与する1 0種類のRhoGEFの機能解析:力覚応答に関与するRhoGEFはSoloの他に10種類同定していることから、MDCK細胞の細胞競合モデルにおいてこれらの発現抑制実験を行って関与を解析する。
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Research Products
(17 results)