2017 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光生体イメージングによる細胞競合制御メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
17H05620
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菊田 順一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60710069)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 生体イメージング / 細胞競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、上皮由来がんの発生初期において、変異細胞がその周囲を正常上皮細胞に囲まれた状態で存在し、両者が生存を争う細胞競合現象が生じていることが明らかとなってきた。これまでに細胞競合に関与する細胞間シグナルや蛋白質が数多く同定されてきたが、生体内における細胞競合を制御する分子メカニズムを詳細に解明するためには、in vitroでの哺乳類培養細胞系の解析に加えて、個体を生かしたままin vivoで生きた組織内の生きた細胞を観察し、時空間的な挙動を明らかにすることが大変重要である。 本研究では、二光子励起顕微鏡を駆使して、動物個体を生かしたまま生理的な環境を維持しながら、生体腸管組織内の生きた細胞動態を可視化する生体イメージング手法を確立した。本技術を用いて、細胞競合モデルマウスの生体腸管組織内を観察し、細胞競合により変異がん細胞が正常上皮細胞層より排除される様子を経時的に可視化することに成功し、ショウジョウバエやin vitroの哺乳類上皮培養細胞系で明らかになった細胞競合現象が、哺乳類生体内のin vivoの系でも実際に起こっていることが明らかとなった。これらの研究成果をもとに、細胞競合現象を定量的に数理解析するとともに、細胞競合を行う正常上皮細胞と変異がん細胞を顕微鏡下で選別して抽出し、細胞競合の際に起こる多彩な遺伝子発現変化を1細胞レベルで定量的に解析する新たな方法論を構築することで、従来の研究手法では明らかにできなかった細胞競合に重要な分子やシグナルを同定し、細胞競合制御メカニズムを統合的に解明する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光生体イメージング技術を改良して、細胞競合モデルマウスの生体腸管組織内を長時間観察し、正常上皮細胞や変異細胞の動きや形態変化など得られたイメージング画像を定量的に数理解析することができ、平成29年度終了時としては順調に経過している。
|
Strategy for Future Research Activity |
生体組織内では、個々の細胞の遺伝子発現レベルは周りの環境に応じて経時的に変化する。がんの発症過程において、細胞間相互作用を介して個々の細胞の運命が決定される細胞競合の複雑な制御メカニズムを解明するためには、組織全体の細胞を回収して遺伝子発現レベルを解析する従来の研究手法ではなく、生理学的・病理学的ながん微小環境を維持した上で、1細胞レベルで遺伝子発現を解析する新たな方法論の構築が必要である。今後、蛍光生体イメージング技術の特徴を生かし、細胞競合の制御に関わる分子やシグナルの探索を行う。さらに、細胞競合の制御因子が得られた際には、それらを阻害あるいは促進させることにより、細胞競合の動態にどのような変化が生じるか解析を行う。
|