2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞競合による肝臓の腫瘍抑制機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
17H05623
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 淳史 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30415195)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝臓 / 幹細胞 / 腫瘍 / p53 |
Outline of Annual Research Achievements |
p53遺伝子欠損肝幹細胞は、免疫不全マウスの皮下や脾臓に移植すると悪性度の高い腫瘍を形成するが、肝臓へ移植しても腫瘍形成は起こらない。正常な肝幹細胞が肝臓内に生着して増殖することを考えると、p53遺伝子欠損肝幹細胞は肝臓内に生着できずに排除され、その結果、肝臓内では増殖できず、腫瘍を形成することができないのではないかと考えられる。すなわち、肝臓の正常な細胞が周囲にいる場合、正常な肝幹細胞であれば増殖を許されるが、腫瘍形成能をもつp53遺伝子欠損肝幹細胞は増殖を許されず、細胞競合によって排除されてしまう可能性が考えられる。そこで本研究では、肝臓組織からのp53遺伝子欠損肝幹細胞の排除が細胞競合によるものなのかを明らかにし、その排除メカニズムの解明を目指す。これまでに行った研究では、肝臓に移植したp53遺伝子欠損肝幹細胞の位置や個数の経時的変化について解析を行うことで、移植した細胞が増殖することなく肝臓中に存在し、徐々にその数を減少させることが判明した。また、興味深いことに、障害を与えた肝臓にp53遺伝子欠損肝幹細胞を移植したところ、正常肝へ移植した場合とは異なり、肝臓以外の組織に移植したときと同様に細胞数が徐々に増加し、最終的に肝臓内に腫瘍を形成することが判明した。この結果は、肝臓の環境に応じて移植したp53遺伝子欠損肝幹細胞の運命が左右されることを意味しており、正常肝ならば排除、障害肝ならば生着・腫瘍形成という相反する結果を示している。言い換えれば、障害肝に移植されたp53遺伝子欠損肝幹細胞には細胞競合を免れる機構が存在すると考えられ、正常肝と障害肝それぞれの環境に依存した細胞競合の性質変化という新しい事象を提示しているように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに行った研究では、肝臓に移植したp53遺伝子欠損肝幹細胞の位置や個数の経時的変化について多くのデータを得ることができた。また、障害肝に移植されたp53遺伝子欠損肝幹細胞には細胞競合を免れる未知の機構が存在することを示唆するデータも得た。したがって、肝臓組織からp53遺伝子欠損肝幹細胞が排除されるメカニズムの解明に向けておおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、正常肝と障害肝に移植したp53遺伝子欠損肝幹細胞の位置や個数を経時的に解析するとともに、移植細胞周囲の環境の違いから障害肝に移植したp53遺伝子欠損肝幹細胞が生存・増殖し、腫瘍を形成するメカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(8 results)