2017 Fiscal Year Annual Research Report
Deterioration of Cellular Competitiveness with Organismal Aging
Publicly Offered Research
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
17H05626
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
田守 洋一郎 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助教 (10717325)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細部競合 / 老化 / 細胞死 / 組織恒常性維持 / ショウジョウバエ / 上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞競合において、より適応度の低い細胞(loser cell)が、より適応度の高い細胞(winner cell)と隣接した際にloser cellにアポトーシスを誘導する細胞死誘導因子の候補として、以前に行った遺伝学的スクリーニングから5種のmiRNAが得られた。これらに関して、ショウジョウバエの成虫原基上皮組織においてmycの発現差によって生じる細胞競合条件で各々の機能解析を行ったところ、細胞死に関与するものは2種に絞ることができた。これら2種のmiRNAの細胞競合における機能を解析するために、遺伝学的モザイクを利用してショウジョウバエの成虫原基上皮組織に誘導した細胞競合において、(1)変異細胞(loser cell)のみで各miRNAの機能を阻害した場合、(2)正常細胞のみで各miRNAの機能を阻害した場合、それぞれの状況における変異細胞の細胞死を検証した。この結果、一つのmiRNAは、(1)の実験条件で変異細胞のアポトーシスが抑制され、(2)では抑制されなかったため、このmiRNAによるアポトーシス誘導は変異細胞自身での細胞自律的なメカニズムによるものと考えられた。 また、ショウジョウバエの卵巣濾胞上皮組織をモデルとした研究では、以前に行ったトランスクリプトーム解析から、mahjong変異細胞と正常細胞間での細胞競合が個体の老化に伴って起こらなくなる原因に関与する遺伝子、つまり老化に伴う細胞競合能の低下に関与している候補遺伝子を複数同定することに成功した。これらの各遺伝子について、実際の細胞競合を誘導したモザイク組織における発現解析、及び変異体やGal4-UASシステムによるRNAiを用いた表現型解析を行うために必要なショウジョウバエの各遺伝系統の作成作業を行った。 これらの研究成果については国内外の学会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)loser cellのアポトーシス誘導メカニズムの解析に関しては、概ね当初の計画通りに進んでいる。まず、mycの発現差によって生じる細胞競合条件下での機能解析から、以前に遺伝学的スクリーニングで得られていた5種のmiRNAを2種に絞ることができた。さらにこれらについて行った機能解析から、このうち1種のmiRNAはloser cellにおいて細胞自律的なメカニズムでアポトーシスを誘導していることが分かった。 (2)個体老化に伴う細胞競合能低下のメカニズムの解析に関しては、概ね当初の計画通りに進んでいる。トランスクリプトーム解析から得られた関連候補遺伝子について機能解析を行うために必要なショウジョウバエの各遺伝系統の作成を行ったが、実際の機能解析のための実験は現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)loser cellのアポトーシス誘導メカニズムの解析に関しては、現在まで順調に進んでいるため、平成30年度については申請書の計画通り、miRNAによる細胞競合依存的細胞死の作用機序の解析へと進む予定である。しかし、今年度の研究結果から、候補に残った一つのmiRNAはloser cellにおいて細胞自律的なメカニズムでアポトーシスを誘導していることが示唆されており、これは当初の仮説とは異なっている。このため、当初予定していたギャップジャンクションの機能解析に加え、このmiRNAの発現解析と機能解析に力を入れる予定である。 (2)個体老化に伴う細胞競合能低下のメカニズムの解析に関しては、これまで研究計画通り、トランスクリプトーム解析から得られた関連候補遺伝子について機能解析を行うために必要なショウジョウバエの各遺伝系統の作成を行い、現在はショウジョウバエ卵巣濾胞上皮組織をモデルに解析中であるが、今年度はさらにショウジョウバエ成虫腸上皮組織での細胞競合においても解析を行う予定である。また、これらショウジョウバエでの解析から関連候補遺伝子を絞って、当初の研究計画通り哺乳類培養細胞を用いた実験系での解析も行う予定である。
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Research Products
(9 results)