2017 Fiscal Year Annual Research Report
Role of cell competition in epithelial barrier homeostasis
Publicly Offered Research
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
17H05627
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
大谷 哲久 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 助教 (50415105)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 細胞競合 / 密着結合 / 上皮バリア / ホメオスタシス / ミオシン / 張力 / 接着結合 / Afadin |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮組織は、体外と体内を区画化するバリアとして働く。本研究においては、上皮バリアのホメオスタシスにおける細胞競合の役割を明らかにすることにより、上皮バリアの破綻が検知されて修復される仕組みを解明する。 これまでの研究において、上皮バリアが破綻した細胞が上皮シート内に出現すると、細胞競合によってバリア破綻細胞が選択的に除去されることにより、上皮バリアの恒常性が保たれることを示した。また、既に予備的結果から、正常細胞とバリア破綻細胞の境界面に接着結合の裏打ちタンパク質であるAfadinが濃縮することを見出していた。そこで、まずAfadin KO細胞およびE-cadherin KO細胞を作成し、バリア破綻細胞の除去における接着結合の役割を検討した。免疫染色および先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)の支援によるバリア破綻細胞の除去過程のタイム・ラプス・イメージングを行ったところ、AfadinあるいはE-cadherinのKO細胞との共培養下においては、バリア破綻細胞の除去が顕著に抑制された。これらの結果から、接着結合がバリア破綻細胞の検知に重要であることが示唆された。さらに、Afadinの集積機構を検討したところ、Afadinがミオシン依存的に集積すること、また正常細胞とバリア破綻細胞の境界面で接着結合に強い張力がかかっていることを見出した。バリア破綻細胞ではミオシンの異常な亢進が認められることから、張力の不均衡性によってバリア破綻細胞が検知される可能性が示唆された。 また、先端モデル動物支援プラットフォームの支援により化合物ライブラリ・スクリーニングを行ったところ、いくつかのシグナル伝達経路がバリア破綻細胞の除去に関与する可能性が示唆された。今後、これらのシグナル伝達経路の機能阻害実験を行うことにより、その関与の有無について検証したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の主要な課題であったバリア破綻細胞の検知におけるAfadinの役割について、Afadin KO細胞を作成することにより明快な結果を得ることが出来た。また、バリア破綻細胞の除去にAfadinの張力依存的な集積が関わる可能性を示す結果が得られ、接着結合における張力感知が重要な役割を果たすことが示唆された。これらの結果は、バリア破綻細胞の検知機構の解明につながる重要な足掛かりであると共に、Afadinが接着結合におけるメカノトランスダクションに関わることを示唆する結果であり、今後の展開が期待される。 また、予定していた細胞競合過程のタイム・ラプス・イメージングの実験系も先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)の支援により構築することが出来、5日間にわたる除去過程全体のイメージングが可能となった。今後、様々なマーカー分子の挙動をイメージングすると共に、得られたムービーのデータの定量的解析も進めていきたい。一方、CLEM法により正常細胞とバリア破綻細胞の境界面の微細構造を検討する予定であったが、実験系の構築にやや時間がかかったため、平成29年度は実際のデータ取得には至らなかった。課題はほぼ解決しているので、平成30年度には結果が得られると期待される。 バリア破綻細胞の除去に関わるシグナル伝達経路の探索についても、先端モデル動物支援プラットフォームの支援により化合物ライブラリ・スクリーニングを行うことが出来、いくつか候補となるシグナル伝達経路が浮上している。平成30年度には阻害剤の濃度依存性の検討やRNAiやゲノム編集を用いたシグナル伝達経路の機能阻害を行うことにより、これらのシグナル伝達経路がバリア破綻細胞の除去において果たす役割についてさらに検証を重ねたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、接着結合による張力感知が正常細胞と異常細胞の境界面へのAfadinの集積に関与する可能性が考えられる。そこで、今後、接着結合におけるメカノセンシングにおいて中心的な役割を果たすα-カテニン/Vinculinに注目し、α-カテニンの構造変化およびVinculinの集積がAfadinの局在およびバリア破綻細胞の除去にどのような役割を果たすかを検討する。具体的には、α-カテニンのKO細胞を作成し、そこに張力依存的な構造変化やVinculinもしくはAfadinとの結合が不全となるような変異α-カテニン分子を発現することにより、接着結合におけるメカノトランスダクションがバリア破綻細胞の除去に果たす役割を検討する。また、これらの細胞を用いてタイム・ラプス・イメージングを行い、バリア破綻細胞の除去過程の解明を進める。また、CLEM法を用いて正常細胞とバリア破綻細胞の境界面の微細構造を特に細胞骨格の再編成に注目して明らかにする。 また、平成29年度の化合物スクリーニングによりいくつかのシグナル伝達経路がバリア破綻細胞の除去に関わる可能性が示唆されている。そこで、これらのシグナル伝達経路の阻害剤を改めて購入し、その阻害剤の作用について濃度依存性を含めて検討する。バリア破綻細胞の除去を阻害するような阻害剤が同定できた場合には、さらにRNAiやゲノム編集を用いてそのシグナル伝達経路の機能を阻害し、バリア破綻細胞の除去における役割を解明する。また、同定できたシグナル伝達経路と接着結合におけるメカノトランスダクションの関係性について、シグナル伝達分子の活性を可視化することにより検討を進める。
|
Research Products
(4 results)