2017 Fiscal Year Annual Research Report
加齢に伴う筋衛星細胞機能障害のグローバル解析
Publicly Offered Research
Project Area | Establishing a new paradigm of the pathogenesis of diseases through the understanding of stem cell aging |
Project/Area Number |
17H05636
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大石 由美子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, テニュアトラック准教授 (80435734)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 筋衛生細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルコペニアは「加齢に伴う骨格筋の質的・量的低下」と定義され、高齢者におけるQOL低下の主要な原因となるため、病態の解明と治療・予防法の開発が急務である。サルコペニアは骨格筋の修復と再生のインバランスを背景として発症する。骨格筋の修復と再生を担うのは、筋衛星細胞という骨格筋特異的な幹細胞である。サルコペニアでは筋衛星細胞の数や活性化率、筋分化能の低下が指摘されているが、健常時に筋衛星細胞の未分化性が保たれるしくみや、加齢に伴い筋衛星細胞の恒常性が破綻し、サルコペニアを発症する分子機構は明らかではない。一方、骨格筋の修復や再生に、ストレス応答性転写因子Klf5が重要な役割を果たす。そこで本研究では、Klf5の機能とそれを軸とした筋分化プログラムの制御異常が、加齢に伴う幹細胞機能異常としての未分化性の低下や分化・再生能の低下に直結するのではないかと考え、検討を進めた。 これまでの検討から、Klf5を欠損した筋衛星細胞は未分化性のマーカーであるPax7の発現を高度に保ったままin vitroで長期に培養できることを見いだした。さらに、Klf5機能を薬理学的に抑制することによって、細胞周期を止めることなく、幹細胞としての未分化性を保持したまま筋衛生細胞を長期に培養し、増産できることが可能となった。この知見は、これまで技術的に困難とされていた、筋衛生細胞を生体外で培養する新しい手法として有用であると考え、特許を出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度中にKlf5機能を薬理学的に抑制することによって、細胞周期を停止させることなく、幹細胞としての未分化性を保持したまま筋衛生細胞を長期に培養し、増産できることを見いだし、筋衛生細胞の新規培養法として有効であると考え特許を取得した。さらに、これらの分子機構の解明のため、転写とトランスクリプトームの解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
加齢に伴い筋衛星細胞の未分化性が失われる分子メカニズムを解明する。加齢に伴う筋衛星細胞の未分化性の喪失が、Klf5依存的な筋分化プログラムの抑制不全によって生じるとの仮説を検証する。具体的には、若齢(4週令)、壮齢(8週令)、高齢(20週令)、老齢(2歳令)マウス由来の筋衛星細胞における、転写因子のゲノムへの結合やヒストン修飾の変化、トランスクリプトームの発現を、ChIP-seqとRNA-seqとを組み合わせてグローバルに解析してゆく。
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