2017 Fiscal Year Annual Research Report
脈絡叢の変性と神経幹細胞老化の連関解析
Publicly Offered Research
Project Area | Establishing a new paradigm of the pathogenesis of diseases through the understanding of stem cell aging |
Project/Area Number |
17H05647
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堅田 明子 九州大学, 医学研究院, 助教 (00615685)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 老化 / 神経 / 加齢 / 認知障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳室に存在する脈絡叢は、脳脊髄液を産生するとともに血液脳脊髄液関門を構成する組織として機能するが、我々はこれまでに脈絡叢が神経幹細胞の分化制御に関わるサイトカインや成長因子を多数産生することを見出している。本研究課題では、加齢に伴う脈絡叢変性の分子機構を理解するため、網羅的遺伝子発現解析を行い、バリア機能の維持に寄与する遺伝子の探索とその機能解析を通して、脈絡叢の機能変性を抑制することで、認知機能や加齢性脳疾患発症への影響を解析する。 これまでに、若年(3、6ヶ月齢)および加齢マウス(21ヶ月齢)脈絡叢における遺伝子発現を次世代シーケンサーにより網羅的に解析、加齢に伴い発現変動する遺伝子を同定した。その結果、神経幹細胞の分化・増殖に関わる成長因子等の発現には有意な差が認められず、加齢に伴い発現上昇する遺伝子群としては、炎症関連遺伝子や細胞接着に関わる因子が優位であることが明らかとなった。脈絡叢における炎症や細胞接着因子の発現変動は、血球系細胞の脳内浸潤の制御に重要であることが容易に推察される。そこで、これら脳炎症の起点を抑制・制御する分子標的の探索を引き続き行っている。 候補因子は脈絡叢における過剰発現、もしくは浸透圧ポンプを使用した脳室内投与により、海馬や脳室下帯に残存する神経幹細胞の増殖や新生ニューロンの数の定量、また新規物体認識試験などマウス行動解析を行うことで評価する。また、脳炎症の評価には活性化ミクログリアや反応性アストロサイトの数を免疫組織化学的に解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず炎症制御として、慢性炎症関連遺伝子Angptl2の寄与を解析すべく、Angptl2ノックアウトマウスを入手し、神経幹細胞の増殖およびニューロン新生の割合を解析した。その結果、Angptl2-KO個体の脈絡叢ではTNFaなど炎症性サイトカインの発現が減少、加齢に伴う神経幹細胞の増殖能低下が野生型マウスと比較して、遅延することを確認した。脳において、Angptl2の発現は脈絡叢に限定的であることも確認している。これまでに、Angptl2-KOマウスおよび野生型マウスから脈絡叢と神経幹細胞を含む海馬組織を単離し、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子発現解析を行うべく、ライブラリー作製も完了しており、おおむね研究は順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度はAngptl2-KOマウス脈絡叢における網羅的遺伝子発現解析の結果から、脈絡叢の幹細胞ニッチとしての重要度を解析する。また、Angptl2-KOマウスの行動解析を実施することで、認知機能への影響を個体レベルで明らかにする。 加えて、野生型加齢マウス脈絡叢において同定した発現変動遺伝子の中から認知機能低下の治療戦略となる分子標的を同定する。候補因子は、脈絡叢における強制発現を若齢個体で誘導し、認知機能やニューロン新生への影響を解析する。加齢の表現型を認めた因子に関しては、老齢マウスにおいて阻害剤や阻害抗体の脳室内投与により、加齢に伴う認知機能の低下やニューロン新生の低下が抑制されるかどうかを確認することで、脈絡叢の機能低下抑制を主軸とした治療戦略を検討する。
|
Research Products
(6 results)