2017 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質リジンアシル化修飾の調節による幹細胞システムの制御とその加齢変化
Publicly Offered Research
Project Area | Establishing a new paradigm of the pathogenesis of diseases through the understanding of stem cell aging |
Project/Area Number |
17H05650
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉澤 達也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (40313530)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サーチュイン / 神経幹細胞 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、主にSIRT7を足がかりに、幹細胞システムにおけるアセチル化以外のアシル化修飾による遺伝子発現制御機構について研究している。平成29年度は以下の研究を実施した。 1)SIRT7の分子酵素学的解析:12種類のアシル基をリジン残基に導入したペプチドを合成し、リコンビナントSIRT7タンパク質を用いてin vitro酵素反応を行い、質量分析にて脱アシル化されたペプチドとO-Acyl-ADPrを検出することにより、脱アシル化活性を測定した結果、SIRT7は中鎖脂肪酸由来のアシル基を取り除く活性が非常に強いことを発見した。さらに、この脂肪酸アシル化リジン残基を認識する特異的抗体の作製を行った。 2)間葉系幹細胞の維持や分化における、SIRT7の役割とその分子機構の解明: Sirt7 KOマウス由来の骨髄間葉系幹細胞を分離し、骨芽細胞への分化が損なわれていることを明らかにした。また、Sirt7 KOマウスの骨組織を解析し、骨形成が低下していることを明らかにした。さらにその分子機構として、SIRT7がOsterixを脱アシル化することで転写活性を促進していることを発見し、現在論文に投稿中である。 3)神経幹細胞の維持や分化における、SIRT7の役割とその分子機構の解明: Sirt7 KOマウスを用いて、学習・記憶行動を解析した結果、Sirt7 KOマウスは恐怖刺激に対する記憶の固定に関与することを発見し、論文に発表した。また、Sirt7 KOマウス海馬由来神経幹細胞(ニューロスフェア)では、自己複製能と神経細胞への分化能が低下していることを見出した。さらに、神経幹細胞を用いたDNAアレイの結果、Sirt7 KOマウスでは神経幹細胞で重要ないくつかの遺伝子の発現が低下していること、また、ある特定の転写調節因子で制御される多くの遺伝子群の発現が増加していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経幹細胞についての研究は順調に進んでおり、まずは論文を一報発表した。また、間葉系幹細胞については、骨芽細胞への分化に関して論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 間葉系幹細胞・神経幹細胞の維持や分化における、SIRT7の役割とその分子機構の解明 a) Sirt7 KOマウス由来の骨髄間葉系幹細胞を分離し、間葉系幹細胞の自己複製能や骨芽細胞と脂肪細胞への分化のスイッチングについてin vitroで解析する。さらに、Sirt7 KOマウスの骨組織を用いて老化による脂肪髄の増加について解析する。分子機構の解明として、昨年度取得したSIRT7の結合タンパク質を用いた脱アシル化反応の解析を行う。b) Sirt7 KOマウス海馬から神経幹細胞を培養し、神経幹細胞の自己複製能や、神経細胞・アストロサイト・オリゴデンドロサイトへの分化についてin vitroで解析する。さらに、Sirt7 KOマウスを用いて学習・記憶行動の解析を行い、SIRT7の海馬における役割について解析する。分子機構の解明としては、昨年度解析したDNAアレイの結果をもとに、標的分子の解析を進める。c) 中長鎖脂肪酸にアルキンを結合させたアルキン脂肪酸を幹細胞に添加し、タンパク質のアルキン脂肪酸アシル化をおこさせる。その後、アルキンに特異的に結合するTag-アジドを反応させ、抗Tag抗体によるアフィニティーカラムによりアシル化タンパク質の網羅的精製を行い、質量分析によるタンパク質同定を行う。d) 幹細胞から免疫沈降法により得られたヒストンを質量分析にて解析し、未知の翻訳後リジンアシル化修飾を検索する。 2) アセチル化以外のアシル化修飾の加齢変化と間葉系幹細胞・神経幹細胞の老化について これまでの研究で得られた結果をもとに、間葉系幹細胞・神経幹細胞における転写因子とヒストンのアシル化修飾が加齢によりどのように変化していくかを解析する。さらに、間葉系幹細胞・神経幹細胞におけるSIRT7の発現が加齢により変化するか否かについても解析する。
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Research Products
(5 results)