2017 Fiscal Year Annual Research Report
新生鎖合成中のリボソームによるmRNA安定性制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
17H05662
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
三嶋 雄一郎 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (00557069)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 翻訳 / リボソーム / コドン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ゼブラフィッシュ初期胚を用いた実験系において、新生鎖合成中のリボソームによるコドン認識がどのようにしてmRNAの安定性制御へと繋がるのか、そのメカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度は、新生鎖合成中のリボソームによって引き起こされる複数のmRNA分解経路を厳密に区別して解析を行うために、それぞれの経路に特異的に反応するレポーターmRNAの構築を行った。その結果、コドン依存的mRNA分解とNo-go decay(以下NGDとする)と呼ばれる異常停止したリボソームに起因するmRNA分解機構は、その引き金となるリボソームの動態だけでなく、その後の分解機構も異なっていることが確認された。これに並行して、新生鎖合成中のリボソームによるmRNA分解に特異的に関与するリボソーム因子/修飾(ユビキチン化など)の同定を行うために、発生時期ごとのリボソーム精製の条件検討を進めた。しかし予定していた方法ではリボソームの精製効率が十分ではないことが判明したため、繰越期間においてリボソーム精製条件を再検討し、ある程度の改善を達成した。今後は、開発したレポーターmRNA実験系によって、コドン依存的mRNA分解とNGDを厳密に見分けながら、それぞれの場合にリボソームに結合する因子の同定、初期発生のステージごとの結合の検証へと進めていく。またmRNA上でのリボソームの動態を網羅的かつ高解像度で解析する必要が生じると予想されるため、リボソームフットプリント解析法の導入や、研究代表者が開発したコドン効果を網羅的に解析する手法(Parallel Analysis of Codon Effects)を導入するための準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はまず、新生鎖合成中のリボソームによって引き起こされる複数のmRNA分解経路を厳密に区別して解析を行うために、それぞれの経路に特異的に反応するレポーターmRNAの構築を行った。同義コドンの差がmRNAの安定性に与える影響を感知するレポーターとして、特定のコドンが1つおきに繰り返し出現するタグ配列を開発した。またリボソームの強い停滞(ストール)が引き起こすmRNA分解現象であるNGDを引き起こす基質として、小胞体ストレスセンサーであるXbp1の停滞配列と、ヒトサイトメガロウイルスgp48のuORF2にコードされている停滞配列(hCMV uORF2)の2つの効果をゼブラフィッシュ初期胚において検証した。その結果、hCMV uORF2を挿入したGFPレポーターmRNAは不安定化していることが明らかになった。コドンタグレポーターによるmRNA分解とhCMV uORF2によるmRNA分解を詳細に比較したところ、前者のみポリA鎖の短縮を伴うことが明らかとなった。mRNA分解機構はその引き金となるリボソームの動態だけでなく、その後の分解機構も異なっていることが確認された。 並行して、発生時期ごとのリボソーム精製の条件検討を進めていたが、当初の予想に反し、リボソーム精製に用いたSBPタグが、ゼブラフィッシュ胚発生初期では、胚発生後期や成体組織などと比較して効率良く働かないことが判明した。リボソームに付加するタグと胚発生初期におけるリボソーム精製条件を再検討し、改良型タグ付きリボソーム精製系統の作成を追加で行う必要が生じたため、当初の計画よりもやや遅れが生じたが、繰越期間においてその改善のための実験を追加で行うことで対応した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発したレポーターmRNA実験系によって、コドン依存的mRNA分解とNGDを厳密に見分けながら、それぞれの場合にリボソームに結合する因子の同定を目指す。それらの因子が決定されれば、初期発生のステージごとに結合に差があるかどうかを検証していく予定である。リボソームの精製方法については、追加実験と検証によって精製効率のいくぶんの改善が認められたが、バッファー条件やタグの種類の変更など、さらに効率の良い方法の開発を視野に入れて準備を進めていく。 本年度の研究計画を進めていく過程で、リボソームに結合するE3ユビキチンライゲースに関する論文が複数発表された。これらについては本研究で同定を目指すリボソーム結合因子の有力な候補であるので、特に注目して解析を進める。具体的には、Hel2/Znf598とCnot4について、ゼブラフィッシュ初期胚での発現解析、発生時期ごとのリボソームへの結合解析、およびCRISPR-Cas9による変異系統の作成を行う予定である。また、今後はmRNA上でのリボソームの動態を網羅的かつ高解像度で解析する必要が生じると予想されるため、リボソームフットプリント解析法の導入を行う必要がある。研究代表者はコドン効果を網羅的に解析する手法(Parallel Analysis of Codon Effects)を開発しており、この方法を本研究計画に導入することにより、初年度の遅れを取り戻して研究計画を進めていくことが可能になると期待される。
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Research Products
(3 results)