2017 Fiscal Year Annual Research Report
サイトゾルで合成される葉緑体蛋白質新生鎖の二重包膜膜透過連携機構の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
17H05668
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中井 正人 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (90222158)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蛋白質輸送 / 葉緑体 / 蛋白質膜透過 / トランスロコン / オルガネラ形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉緑体蛋白質前駆体が葉緑体へと輸送される局面において、われわれは、外包膜の1メガダルトンのTOCトランスロコン、内包膜の1メガダルトンのTICトランスロコン、そして2メガダルトンのモーター複合体、この3者が物理的接触を保ち、巨大な超分子複合体として存在する事を示す実験結果を得ている。in vivo では、これらの複合体が連携して前駆体蛋白質の二重包膜透過に関与していると考えられる。そこで、コンポーネントが確定したこれら複合体間の物理的および機能的連携を詳細に解析し、前駆体蛋白質が運ばれていく経路とも具体的に対応させる事で、葉緑体特有の二重包膜を介した蛋白質膜透過機構を明らかにすることを最終目的として研究を進めている。平成29年度の解析では、前駆体とのより詳細なインターラクションマップを作成するため、前駆体との部位特異的な架橋を計画した。まず、in vitro輸送実験で高い効率で単離葉緑体に取り込まれるもの、さらに、葉緑体への非特異的吸着が少ないものを選んだ。さらに後にシステインに部位特異的架橋試薬を反応させるため、すべてのシステインをセリンに置換した蛋白質をコードするように、また、C末端には検出および精製用のタグ配列を組み込んだ。これを大腸菌で高発現させるために、コドンを最適化した人工遺伝子として全合成した。これを元に、手始めに前駆体のトランジット配列を中心に部位特異的に単一システインを導入した変異体も多数作成した。これらを大腸菌から精製して、in vitro 蛋白質輸送実験に用い、低ATP濃度下、輸送中間体を形成させ、その後、化学架橋、免疫沈降によって、相互作用する相手型蛋白質の同定を進めた。これまでのところ、トランジット配列の網の末端側に導入したシステインに対して、モーター複合体のコンポーネントが強く架橋されるという結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、葉緑体蛋白質輸送実験の多くは、アイソトープラベルされた前駆体を用いており、蛋白質輸送装置と運ばれる側の前駆体蛋白質間での量的な考察が難しかったが、本年度の解析の進展により、大腸菌から精製した蛋白質の効率良い輸送実験が可能となっており、化学架橋および免疫沈降により、運ばれていく前駆体蛋白質と運ぶ側の輸送装置との間の相互作用の詳細を、量的関係も含めて議論できるようになってきている。低ATP濃度下で形成される輸送中間体の、前駆体のどの部分が、輸送装置側のどのコンポーネントと実際に相互作用するか、のインターラクションマップ作りが可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに、確立された部位特異的架橋の系を用いて、前駆体の異なる部位に導入されたシステインを用いてインターラクションマップを完成させる。また、膜透過中間体作成時の ATP 濃度を変化させたり、輸送の経時変化によるインターラクションマップの変化を解析することで、前駆体蛋白質のどの領域がTOC や TIC やモーター複合体のどのコンポーネントと相互作用して運ばれているのか、より信頼性の高いモデルを提唱することが可能となると予想できる。同様の実験を、異なる前駆体でも並行して進める予定にしている。それにより、異なる前駆体により共通に使われるコンポーンネントや、特異的に使われるコンポーネントなどの情報が得られると予想できる。
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Research Products
(4 results)