2017 Fiscal Year Annual Research Report
新生膜タンパク質の膜組込み過程の構造生物科学研究
Publicly Offered Research
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
17H05669
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
田中 良樹 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (10632333)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膜タンパク質 / 膜組込み / 新生鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
新生膜タンパク質の膜組込みに関わる膜タンパク質の構造解析を進めた。Sec経路の構成要素であるSecDFは、基質輸送の過程で構造変化することが知られており、特にP1ドメインと呼ばれる可溶性ドメインが大きく可動して新生タンパク質と相互作用しているとされている。その構造変化をより細かく明らかにすべく本計画では、様々な条件で結晶化を試み、未解明の構造状態を明らかとすべく、構造解析を行った。 その結果、T.thermophilus由来のSecDFのこれまで知られていなかった構造状態を決定した。この構造は既知のF formよりもP1headドメインが脂質膜に近くまで曲がっていたことからSuperF formと命名し発表した(Furukawa et al, 2018 Structure)。この状態では、これまで知られていたP1ドメインの構造変化の他に、P1ドメインと膜貫通ドメインをつなぐ領域の可溶性ドメインの構造がβシートがβバレル型へと大幅に構造変化していた。このような構造変化はこれまでに見つかったことのないタイプの構造変化であった。この構造変化を阻害するような変異を導入したところ、輸送活性が低下した。プロトン輸送に関わる膜貫通領域と、新生タンパク質の輸送に関わるP1headドメインの間をつなぐ部分に大きな構造変化を見つけたことで、これまで不明であったプロトン濃度勾配のエネルギーがP1ドメインによる新生鎖の引き上げに利用される仕組みについての仮説を提唱することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度にSecDF全長構造の分解能の向上や複数状態の構造決定を目指して研究を進め、予想外の構造変化を明らかにすることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
未だシグナル配列の認識機構については明らかでないため、SecYEG、SecDF、YidCそれぞれについて、基質シグナル配列ペプチドを認識した状態での結晶構造の決定を目的に研究を推進する。ペプチドとの混合だけでは認識状態が十分に安定しないことが予想されるため、タンパク質末端に融合させた発現系を構築したり、化学的に結合させて近接状態を維持する方法などを模索する。
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