2017 Fiscal Year Annual Research Report
Relation between active regulation of the translational rate and the tRNA repertoire
Publicly Offered Research
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
17H05672
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
吉久 徹 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (60212312)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | tRNAレパートリー / 機動的翻訳 / mRNA品質管理 / モノソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のribosome profiling等の網羅的解析で、意図された翻訳停止/再開、すなわち機動的翻訳速度制御は新生鎖の機能化に関わる普遍的現象である事が示されつつある。こうした新生鎖の伸長速度制御は、isodecoder tRNAの濃度や量比、即ち“tRNAレパートリー”の影響下にあると考えられる。しかし、真核細胞のtRNAレパートリーがin vivoでの翻訳に及ぼす影響を系統的に解析した例は無い。また、翻訳停止の機構はある程度明らかになっているが、停止した翻訳の解除機構にはまだ不明な点が多い。さらに、正常な翻訳停止状態が、No-Go Decay品質管理の対象となる異常な翻訳中断とどう区別されるかも判っていない。そこで、新生鎖の機能化に関わる機動的翻訳速度制御について、tRNAレパートリーという視点を含めた具体的研究目標を設定し、出芽酵母を用いた研究を展開する。 本年度は①tRNAレパートリーの改変酵母株の作出と解析手段の構築、②モノソーム集積型mRNAの解析を中心に研究計画を進めた。①については、CRISPRiを利用したtRNA-Leu isoacceptorの条件ノックダウン系の構築と反復コドンレポーター系を用いた翻訳状態の解析、温度感受性tRNA変異の単離、系統的tRNA-TrpCCA同義遺伝子欠失変異株群の構築を進め、tRNAレパートリーの異なる様々な酵母株群を作出した。また、新規tRNA定量法によって、出芽酵母のtRNAレパートリーが培養条件(炭素源や生育ステージ)で変化する事を明らかにした。②については、モノソーム集積型と予想されたmRNAのうち、AIM17、MRPL16は、モノソームや少数のリボソームが結合した翻訳状態にあることを確認した。さらには、機動的翻訳停止状態にあるHAC1 mRNAの翻訳抑制に、細胞質エキソソームが関わる事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定した様々なtRNAレパートリーをもつ酵母株が作出できており、また、解析対象であるtRNAに関わるコドン反復レポーター系も多数構築できている。ただし、tRNAのノックダウン条件下や温度感受性tRNA変異の制限温度下では、総タンパク質の発現パターンに影響が出ているものの、翻訳低下を単なるコドン反復レポーターでは敏感に検出し難いことが判った。対応するtRNA量の低下した状態での特定のコドンのデコードはmRNAのコンテクストに敏感である可能性がある。また、モノソーム集積型と予想されたmRNAについても、モノソームだけに集積していると言うより、mRNA長からは予想される数に比べてごく少数のリボソーム(1~3個)に依存した翻訳状態がある事が判った。こうした研究の進捗に伴い明らかになった事実は、以降の研究計画に生かして研究展開を図る。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の様に、特定のtRNA量の低下に基づく翻訳状態の検出法について改善が求められることに加え、モノソーム集積型と予想されたmRNAについて、むしろ、リボソームのローディングが極端に遅いmRNAと捉えて、解析を進める必要が明らかとなっており、この点を考慮して研究計画を進める。ただし、こうした事実に伴う大きな研究計画の変更は必要ではなく、新たな特定のコドン翻訳レポーター系の設計・構築を除けば、当面、所定の計画を進めることで、tRNAレパートリーが機動的翻訳制御を通じてプロテオーム形成にどう影響するかの検討を推し進める。また、H30年度に新たに加わる第3点目の研究項目である機動的翻訳とmRNAの品質管理との関係に関しても、H29年度に構築したtRNAレパートリー改変株などを有効に利用して予定通りプロジェクトを進行させる。
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Research Products
(11 results)