2017 Fiscal Year Annual Research Report
3D免疫染色によるタンパク質の老化基盤の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Prevention of brain protein aging and dementia |
Project/Area Number |
17H05688
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田井中 一貴 新潟大学, 脳研究所, 特任教授 (80506113)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 組織透明化 / 3Dイメージング / 免疫染色 / 神経病理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト脳部検サンプルの透明化プロトコールを開発すると共に、哺乳類脳組織を均一に染色可能な3D免疫染色プロトコールを確立することを目的としている。今年度は、3D免疫染色によるタンパク質の老化基盤の解析に向けて、ホールマウント免疫染色の病理学的な応用に取り組んだ。その結果、マウス脳に転移した癌細胞および平滑筋アクチンのホールマウント免疫染色に成功した(Kubota et al., Cell Rep., 2017, 20, 236-250)。また、脳内タンパク質の老化基盤を解析するためには、領域ごとに凝集タンパク質の蓄積を定量的かつ包括的に解析することが望まれ、3D画像に基づくマウス脳アトラスの作製が必須となる。既存の解剖学的座標にマウス脳の全細胞を割り当てたマウス脳アトラスを作製するために、マウス脳膨潤技術・高解像度観察用シート照明型蛍光顕微鏡・高精度細胞検出アルゴリズムを開発した(Murakami et al., Nat. Neurosci., 2018, 21, 625-637)。ヒト脳剖検サンプルの3D蛍光イメージングを実施するためには、透明化後の褐色状の呈色、およびリポフスチンに代表される強度な自家蛍光などに代表される光学的な障壁が最も大きな課題となっている。従来の透明化プロトコールに加えて、褐変および自家蛍光を効率よく抑制する化学処理を探索することで、488, 532, 594, 632 nm励起によるマルチカラーイメージングおよび組織由来の自家蛍光を10分の1に軽減させることに成功した。新規プロトコール処理後の組織は、グリア細胞や髄鞘、血管、軸索に加えて、老人班やリン酸化タウ、リン酸化シヌクレインといった病変マーカーの抗原性が高度に維持されていることを確認した。以上により、ヒト脳剖検サンプルの3D免疫染色に向けた技術基盤が確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、哺乳類の透明化脳組織に対するホールマウント免疫染色技術の開発を目的としている。マウス脳において癌細胞や平滑筋アクチンのホールマウント免疫染色プロトコールの開発に成功し、申請者らの透明化手法が全脳免染イメージングに適用できることを示した。ヒト脳剖検サンプルでは、透明化後の褐色状の呈色、およびリポフスチンに代表される強度な自家蛍光などに代表される光学的な障壁が存在するため、そのままでは免疫染色による3Dイメージングに適用することができない。そこで、本年度はこれらの光学的な課題の克服に主眼を置いて研究開発を実施した。その結果、褐変を大きく抑制し、488, 532, 594, 632 nm励起による組織由来の自家蛍光を10分の1に軽減させることに成功した。新規プロトコール処理後の組織は、神経細胞やグリア細胞、髄鞘、血管、軸索などの基本構造体に加えて、老人班やリン酸化タウ、リン酸化シヌクレインなどの病変マーカーの抗原性が高度に維持されていることを確認した。以上により、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス脳の免疫染色手法においては、いくつかの抗体を用いてマウス脳丸ごとホールマウント免疫染色プロトコールの開発に成功したが、本プロトコールが種々の抗体にも適用可能であるかどうかの検証が必要である。特に、抗体のような分子量の大きい分子を均一に染色させるための化学的改良が必要になると予想される。そこで、抗体分子の浸透性を高度に亢進させる汎用性の高い染色プロトコールの開発に取り組む。また、透明化処理後のヒト脳剖検組織の褐変および自家蛍光を飛躍的に抑制させるプロトコールを利用して、タンパク質老化の分子機構を明らかにする種々の抗体によるホールマウント免疫染色プロトコールを開発する。
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Research Products
(15 results)