2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間伝播を導くタウの細胞外量調節機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Prevention of brain protein aging and dementia |
Project/Area Number |
17H05689
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 薫 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (00735152)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
タウの異常凝集が細胞外腔を介し、神経細胞から神経細胞へ移行する現象は、「タウの細胞間伝播」と呼ばれ、アルツハイマー病における解剖学的規則性をもったタウ病理の進展の背景にあるメカニズムとして注目を集めている。タウの細胞間伝播は、細胞内に内在化し凝集の核 (seed) として新規タウ凝集を促す特殊な活性をもった細胞外タウ分子によって進行すると考えられる。そこで本研究では、正常に細胞外へ分泌されるモノマータウ分子と区別するために、この活性をseeding活性と定義することとした。研究代表者はこれまでにP301S-tau-CFP/YFPを発現しseed依存的に凝集を生じるtau biosensor細胞を用いることで、FRETを指標にseeding活性を評価可能な実験系を構築している。平成29年度には、一過性にタウを発現・凝集する細胞に加えて、恒常的にタウ凝集体を保持する培養細胞を用いて、培養上清におけるseeding活性は細胞内のタウ凝集に依存することを確認するとともに、培養上清においてタウ多量体を検出することに成功した。またin vivoにおいてseedタウを検出する目的で、加齢依存的にタウを凝集・蓄積するP301S変異型タウトランスジェニックマウス (PS19) の海馬から1000kda cutoffのin vivo microdialysis probeを用いてISFを回収し、そのseeding活性を検出する実験を行った。コントロールである野生型マウスISFと異なり、PS19マウスのISF中にはseeding活性が認められた一方で、上述の培養上清と比較すると活性が極めて低く定量性に乏しいため、定量評価に向けて更なる改良が必要であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の研究実施計画では、①seeding活性を持つタウの分子的実体を明らかにすること、②exosomeなどの細胞外小胞を介した経路の他に、細胞外小胞を介さないようなunconventional secretionの寄与を検討すること、③in vivoにおいてもseedタウを検出する実験系の構築に着手することを挙げていた。①に関しては、二種類のタウ分子を発現し恒常的にタウ凝集体を有する細胞をあらたに導入することで、培養上清においてタウが二量体以上の高分子を形成することを明らかにした。その一方で②細胞外小胞を介さないようなunconventional secretionの寄与の関与を明らかにすることには至らなかった。また③に関しては、加齢依存的にタウを凝集・蓄積するPS19マウスから得たISFを用いてseeding活性を検出する実験系の構築に着手したものの、現存の手法はseeding活性を効率よく検出するには不十分であることが判明し、実験系の改良が必要となったため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
培養上清において伝播を生じるタウのseeding活性が評価可能になったことで、細胞内に内在化し凝集の核となるタウ分子の細胞外量に影響を与える因子を探索できるようになった。特にシグナルペプチド配列を有さないタウが、どのような分子メカニズムで細胞外へ分泌されるのかを明らかにしていくことが今後重要であると考えられる。また将来的にはin vivoにおいてもseedタウを検出する実験系が必要になってくるが、これまでの検討により既存の1,000kda cutoffのプローブを用いたin vivo microdialysis法では、ISFにおいてseeding活性を高効率かつ定量性をもって検出することが困難であることが判明した。そこで今後はより径の大きなmicrodialysisプローブを導入することで、in vivoにおけるseedタウ検出系の構築を行う予定である。
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Research Products
(1 results)