2017 Fiscal Year Annual Research Report
αシヌクレイン伝播に基づく新規パーキンソン病モデルマウスの作製と病態解析
Publicly Offered Research
Project Area | Prevention of brain protein aging and dementia |
Project/Area Number |
17H05698
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 良輔 京都大学, 医学研究科, 教授 (90216771)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / 多系統萎縮症 / アルファシヌクレイン / モデル動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 野生型マウスの嗅球へのフィブリル接種により、嗅覚伝導路と辺縁系を中心としてα-Syn凝集病変の形成を認めた。しかし、野生型マウスにおける伝播は遅く、行動解析による異常も見られなかった。一方で、α-Syn BAC Tgマウスの嗅球にフィブリルを接種すると、嗅覚伝導路と辺縁系を中心にα-Syn凝集病変の劇的な伝播が観察され、嗅覚障害、不安様行動、記憶保持の障害が観察された。野生型マウスの胃壁にフィブリルを接種すると、接種後45日には、迷走神経背側核にα-Syn凝集病変が認められた。しかし、意外なことに、α-Syn凝集病変は経時的に減少し、他脳部位への伝播も見られなかった(投稿中)。
(2) α-Syn BAC Tgマウスの線条体にフィブリルを接種すると、黒質緻密部ドパミン神経細胞に著明なα-Syn凝集病変が形成され、接種後1、2ヵ月の時点で、それぞれ約20%、40%のドパミン神経細胞脱落が起こることを見出した。接種後2ヵ月の時点でアポモルフィンを投与すると、健側への回転運動が生じることが確認できた。
(3) オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)とオリゴデンドロサイト(OLG)にフィブリルを投与したところ、α-Syn陽性細胞内封入体はOPCにおいて観察されたが、OLGには観察されなかった。OPCにおける封入体は1)内因性(ラット細胞由来)α-synを含み高分子化していること、2)フィブリルを投与しない条件と比較して著明な内因性α-synの上昇がみられることが判明した。その背景には、オートファジー・リソソーム分解系の異常の関与が示唆された。さらに、封入体形成したOPCを分化誘導すると、α-Syn陽性封入体を有するOLGが認められた。これらの細胞ではミエリン形成に関わる蛋白の発現が低下する他、神経細胞に対する保護効果が減弱することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 嗅球にα-Synフィブリルを接種する実験は、野生型マウスとα-Syn BAC Tgマウスいずれも解析をほぼ終了しており、平成30年度前半に論文投稿可能になると思われる。消化管壁にα-Synフィブリルを接種する実験は、野生型マウスについては論文投稿中で、α-Syn BAC Tgマウスも必要匹数をすでに接種済で、経時的に病理学的解析を行うセットアップが完了している。
(2) α-Syn BAC Tgマウスの線条体にフィブリルを接種することで、黒質緻密部ドパミン神経細胞細胞にα-Syn凝集病変を形成し、早期に細胞脱落を起こすモデルが確立できつつある。同モデルは薬剤効果検証に有用と考えている。
(3) 多系統萎縮症におけるOLG内α-Syn凝集病変形成の病態機序解明に繋がる研究結果が得られ、論文発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) α-Syn(A53T) BAC Tgマウスの嗅球にα-Synフィブリルを接種すると、嗅覚伝導路と海馬を中心として劇的なα-Syn凝集病変が観察され、接種後7ヵ月の時点で嗅覚障害、不安、記憶保持の障害など、PDの非運動症状と考えられる行動異常が観察された。本年度は同モデルの行動解析と病理学的解析を進め、論文投稿する。また、伝播が促進されるα-Syn(A53T) BAC Tgマウスの消化管にα-Synフィブリルを接種しており、これを経時的に解析する。同モデルの解析も順調に進んでおり、本年度中に論文投稿可能と考える。
(2) α-Syn(A53T) BAC Tgマウスの線条体にフィブリルを接種することで、α-Syn凝集病変を伴い、早期に黒質緻密部ドパミン神経細胞脱落を示すマウスモデルを確立する。本年度は同モデルマウス行動解析を行い、病理学的解析を追加して論文投稿する。
(3) α-Syn凝集を形成したオリゴデンドロサイトの神経保護効果に与える影響についてRNA-seqによる網羅的解析を行うとともに、これらの神経保護効果改善に有力視される候補薬について有効性を検証する。またMSA脳で見られるα-Syn凝集体の細胞モデルとして、より病態を強く反映するモデルの改良を試みる。
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Research Products
(16 results)