2017 Fiscal Year Annual Research Report
異常構造型脳タンパク質の経口摂取による神経変性疾患発症の可能性
Publicly Offered Research
Project Area | Prevention of brain protein aging and dementia |
Project/Area Number |
17H05705
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古川 良明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40415287)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / 銅タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
SOD1をコードする遺伝子への変異は、神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症原因となる。ALSの詳細な発症メカニズムは不明であるものの、脊髄運動ニューロン内での変異型SOD1タンパク質のオリゴマー化・凝集が主要な病理学的特徴であるとされている。SOD1は銅・亜鉛イオンを結合する金属タンパク質であるが、それらが解離してアポ化すると、タンパク質構造の熱安定性が失われ、オリゴマー化しやすくなることを我々は報告してきた。しかし、ALS病態が形成する際に、SOD1のアポ化が生体内で実際に進行しているのかについては未だ明らかとなっていない。そこで本研究では、アポ型のSOD1を特異的に認識する抗体を作製し、モデルマウスやALS患者におけるアポ型SOD1の免疫化学的な検出を試みた。 SOD1の金属イオン結合部位を含むペプチドでウサギを免疫し、抗血清をアフィニティー精製することでアポ型SOD1を認識する抗体(アポ抗体)を得た。アポ抗体は、野生型のSOD1や金属イオンを結合した変異型のSOD1とは反応せず、銅イオンを結合していない変異型のSOD1とのみ反応する認識特異性を示すことが分かった。また、ALSモデルマウスにおいて、アポ抗体との反応性は脊髄特異的に観察されたものの、発症前で最も高く、病態の進行と共に低下した。一方で、病変が認められない小脳は、アポ抗体との反応性を示さなかった。さらに、SOD1変異を伴うALS患者の主要な病変部位である脊髄前角においても、アポ抗体との反応性を確認することができた。ALSの病因タンパク質である変異型のSOD1は、疾患早期の脊髄において、銅イオンを解離した状態として存在しており、それらがオリゴマー化の前駆体として病態の形成に関与することが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、線虫をモデルにした脳タンパク質の毒性評価を行う計画であり、本年度は脳タンパク質の一つであるSOD1に着目し研究を進めた。実績の概要にも記載した通り、神経変性疾患の発症に関わるSOD1の構造変化を同定し、その検出にかかる抗体を作製することに成功した。よって、本計画は概ね順調に進展していると考えられ、今後は毒性評価のための線虫モデルの確立をさらに進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
SOD1の他に、パーキンソン病の原因タンパク質であるαシヌクレインにも着目して研究を進める。特に、線虫を用いた脳タンパク質の老化に伴う毒性発揮について、定量的に評価できるシステムを構築する計画である。
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