2017 Fiscal Year Annual Research Report
酸素発生型光合成生物に保存された新規プロトン濃度最適化機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
17H05719
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
増田 真二 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 准教授 (30373369)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光合成 / 葉緑体 / プロトン濃度勾配 / NPQ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者らが近年同定した葉緑体内プロトン濃度調節因子の機能解析を進めることで、光環境に応じてプロトン駆動力を調節する新たな仕組みを解明し、光合成最適化に必要な、吸収した余剰な光エネルギーを熱として安全に消去する「非光化学消光(NPQ)」を制御する新たな仕組みの存在を世界に先駆けて証明することである。 申請者はこれまでに、本分野の主流である順遺伝学的な手法によってNPQ関連変異体をこれ以上選別することは 難しいと考え、これまでとは異なる様々な逆遺伝学的スクリーニングを行い、NPQ誘導が野生型よりも高くなる 2つの新奇変異体の単離に成功した。この原因遺伝子LAP1とLAP2 (LIGHT ACCULIMATION PROTEIN 1 and 2)は、シアノバクテリアを含む酸素発生型光合成生物に保存されており、これまでの解析から、チラコイド膜と包膜の 両方において、プロトンの排出を制御することで、葉緑体やシアノバクテリア内のプロトン濃度を適切に調節する因子をコードしていることが示唆された。本研究では、LAP1とLAP2の機能解明を目指し研究を遂行してきた。その結果、大腸菌変異体を用いた相補実験により、LAP1およびLAP2いずれも単体ではトランスポータ変異を相補しないことがわかった。またアミノアクリジン蛍光測定によるΔpHの直接測定を試みたところ、lap2変異体は、プロトンの膜を隔てた通過能力が特に弱光化で弱まることがわかった。さらにlap2変異体は、野生型に比べ、全ての光強度下において、ΔpHの形成が過剰に引き起こされている予備的データの取得に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 LAP1とLAP2のプロトン輸送活性測定 シロイヌナズナとシアノバクテリアのlap1およびlap2変異体の表現型から、LAP2がプロトン輸送を直接担い、 LAP1がそのLAP2の機能を制御しているモデルを構築した。このことを直接的に検証するため、LAP1とLAP2が実際 に膜を隔てたプロトン輸送に関与するのかを、大腸菌反転膜やアフリカツメガエルを用いたトランスポータ活性測定等により明らかにすることを試みた。まず、大腸菌の各種トランポーター変異体を用いた相補実験を、東北大学の魚住研究室と共同で実施した。その結果、LAP1およびLAP2いずれも単体ではトランスポータ変異を相補しないことがわかった。 2 組換え体の解析 LAP1とLAP2の機能がプロトン輸送を担うものだとすると、シロイヌナズナのlap1, lap2変異体で見られる表現型は、ルーメンとストロマ間、もしくはストロマと細胞質ゾルとのプロトンの輸送阻害に起因すると考えられる。この可能性を検証するため、PAMクロロフィル蛍光測定装置を利用したカロテノイドバンドシフト(ECS)およびアミノアクリジン蛍光測定によるΔpHの直接測定を試みた。これまでに、東京大学の寺島研究室の協力を受け、PAMクロロフィル蛍光測定装置を利用したECS実験を行い、lap2変異体は、プロトンの膜を隔てた通過能力が特に弱光化で弱まることがわかった。またアミノアクリジン蛍光測定を行ったところ、lap2変異体は、野生型に比べ、全ての光強度下において、ΔpHの形成が過剰に引き起こされている予備的データの取得に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
1 LAP1とLAP2のプロトン輸送活性測定 シロイヌナズナとシアノバクテリアのlap1およびlap2変異体の表現型から、LAP2がプロトン輸送を直接担い、LAP1がLAP2の機能を制御していると考えられた。H29年度は、このことを直接的に検証するために、大腸菌の各種トランポーター変異体を用いた相補実験を、東北大学の魚住研究室と共同で実施した。その結果、LAP1およびLAP2いずれも単体ではトランスポータ変異を相補しないことがわかった。この結果から、LAP1とLAP2が同時に機能してはじめてトランスポーターの活性を得るという可能性が示唆された。そこで今年度は、LAP1とLAP2を同時に大腸菌変異体に導入し、そのことの検証を行う。 2 組換え体の解析 H29年度に引き続き、シロイヌナズナのlap1, lap2変異体の解析を継続する。これまでに、PAMクロロフィル蛍光測定装置を利用したカロテノイドバンドシフト(ECS)実験から、lap2変異体は、プロトンの膜を隔てた通過能力が特に弱光化で弱まることがわかった。今年度は、アミノアクリジン蛍光測定によるプロトンの濃度勾配の直接測定を行うことで、このことの検証を進める。
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[Journal Article] FLUCTUATING-LIGHT-ACCLIMATION PROTEIN1, Conserved in Oxygenic Phototrophs, Regulates H+ Homeostasis and Non-Photochemical Quenching in Chloroplasts2017
Author(s)
Sato, R., Kono, M., Harada, K., Ohta, H., Takaichi, S. and Masuda, S.
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Journal Title
Plant Cell Physiol.
Volume: 58
Pages: 1622-1630
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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