2017 Fiscal Year Annual Research Report
ロドプシンによる葉緑体プロトン勾配制御システムの確立と植物応答解析への展開
Publicly Offered Research
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
17H05726
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
須藤 雄気 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (10452202)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ロドプシン / 光 / プロトンポンプ / 生物物理 / NPQ / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物による光合成は、水と二酸化炭素から、炭素固定・酸素発生・ATP産生を行う反応で、生命活動の源でもある。植物には、光強度にあわせて余剰なエネルギーを熱として放出する機構(Non photochemical quenching:NPQ)が備わっており、効率的な光合成を実現している。これらは、光合成に伴うルーメン側の酸性化(プロトン濃度上昇)が引き金になることがわかっているが、その制御機構はわかっていない。本研究では、光合成色素クロロフィルがほとんど吸収しない緑色光で働くロドプシンを植物の葉緑体に異種発現させ、人為的に膜を介したプロトン移動を誘起する。これにより、擬似的に強・弱光条件を再現し、その際に起こる植物応答を解析することで、NPQ制御メカニズムを解明することを目的としている。 本年(H29年度)は、(1)様々な種類のロドプシン分子から、本研究に用いる分子の選定(アーキロドプシン3:AR3とルブリコッカスマリナスゼノロドプシン:RmXeR)を行った。次に、(2)植物モデルとしてのクラミドモナスおよびシロイヌナズナへの遺伝子導入を行った。さらに(3)クラミドモナスについては、その組み換え体においてAR3とRmXeRの発現を確認した。植物細胞における異種ロドプシンの発現は世界初となる成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はロドプシンを発現した組み換え体植物の取得とその解析を行うことを目指している。本年度は具体的に以下の成果を得た。 (1)様々なロドプシン分子のうち、本研究では発現量やこれまでの発現実績などから、細胞内から細胞外への外向きプロトンポンプ・アーキロドプシン3(AR3)と細胞外から細胞内への内向きプロトンポンプ・ルブリコッカスマリナスゼノロドプシン(RmXeR)を用いることとし、選定を終えた。後者については原著論文として発表した【Phys. Chem. Chem. Phys. 2018, 20, 3172】。(2)植物のモデルとしてクラミドモナスならびにシロイヌナズナを用いることとし、上記AR3とRmXeRの発現プラスミドを構築した。(3)組換えクラミドモナスならびにシロイヌナズナの取得を試み、クラミドモナスについては、C末端に付加したHAを利用したウェスタンブロッティング解析により、その発現ならびに発色団レチナール添加による発現量の増大を確認した。このように、当初計画(ロドプシン発現植物の取得)通りに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、発現が認められたクラミドモナスに緑色光を照射し、細胞内のpHが変化しているかをpH感受性色素により調べる。酸性化もしくはアルカリ化が確認されたものについて、緑色光照射依存的な形態・生育などの表現系やNPQ機能の変化を解析する。本領域の計画班は、様々な植物応答解析の専門家より構成されており、本研究で作出する組換え体を利用し、それぞれの専門家とも共同研究を行いたいと考えている。シロイヌナズナについては引き続き発現個体の取得を目指して研究を進める。
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