2017 Fiscal Year Annual Research Report
チオレドキシンによる光化学系Iサイクリック電子伝達の制御機構解明
Publicly Offered Research
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
17H05730
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
桶川 友季 京都産業大学, 総合生命科学部, 研究助教 (10582439)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | チオレドキシン / サイクリック電子伝達 / 光合成 / レドックス制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
光化学系I(PSI) サイクリック電子伝達は、光合成だけではなく光防御機構に不可欠であることが証明されている。しかしこれまでのところ、その制御機構についてはあまりわかっていない。最近、PSI サイクリック電子伝達がストロマのレドックス状態によって制御されることが明らかにされ、ストロマのレドックス状態を感知し、多くの標的タンパク質の活性を調節するチオレドキシン(Trx)がその制御因子である可能性が示唆された。しかし5グループ10種類あるTrxのどのアイソフォームが制御因子であるかはわかっていない。 私たちはこれまでにm型Trxの欠損変異株がPSIサイクリック電子伝達活性が上昇したPGR5と同様にクロロフィル含量の減少と生育の遅延の表現型を示すことを明らかにしている。 本年度はTrxとPSIサイクリック電子伝達の生理学的な関係を明らかにするためにm型Trxの欠損変異株とPSIサイクリック電子伝達の欠損変異株の多重変異株を作出し、表現型の解析をおこなった。PSIサイクリック電子伝達のメインの経路に必須であるPGR5を欠損した変異株との多重変異株ではm型Trxの生育の表現型が大きく回復しており、m型Trxの欠損変異株においてPSIサイクリック電子伝達活性が上昇していることを明らかにすることが出来た。この結果は、m型TrxがPSIサイクリック電子伝達活性を抑制している可能性を示唆している。 またこの結果と一致して、単離葉緑体を用いた実験ではm型Trxが特異的にPSIサイクリック電子伝達活性を阻害することを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画にあげていた通り、5グループ10種類全てのTrxの精製タンパク質と単離チラコイド膜を用いてPSIサイクリック電子伝達活性の評価をおこなうことが出来た。その結果、5グループあるTrxのうちm型Trx(Trx m3を除く)が特異的にPSIサイクリック電子伝達活性を阻害することを明らかにすることが出来た。次年度はm型Trxに絞ってTrxがどのタンパク質を標的としているかを調べることが出来る。 また当初は次年度におこなう予定であったTrxとPSIサイクリック電子伝達の変異体の解析を本年度におこなった。m型Trxの欠損変異株においてPSIサイクリック電子伝達活性が上昇していることを明らかにし、単離葉緑体を用いた実験結果と一致してm型TrxがPSIサイクリック電子伝達活性を抑制していることを示唆する結果を得ることが出来た。 一方で、変異体の解析を前倒しでおこなったため、本年度におこなう予定であったTrxの標的タンパク質の同定の実験に遅れが生じた。しかし、スクリーニングに用いるTrx変異体はすでに完成しており、次年度にすぐに実験をおこなうことができる状況にある。また、変異体の解析を先におこなうことによってin vitroとin vivoの両方の実験からm型TrxがPSIサイクリック電子伝達活性に関与することを明らかにすることが出来たため、次年度ではm型Trxに絞って候補タンパク質のスクリーニングに取り組むことができる。 以上のことから研究計画は概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、Trxによる光化学系Iサイクリック電子伝達の制御機構解明を目指して研究をお こなう。本年度におこなったin vivoおよびin vitroの実験からm型TrxがPSIサイクリック電子伝達を特異的に制御することを明らかにした。そこで次年度はm型Trxに絞って実験をおこなう。 PSIサイクリック電子伝達には二つの経路があるがどちらの経路がTrxの制御下にあるかはわかっていない。そこで変異体を用いて単離葉緑体の実験をおこなうことによってm型Trxがどちらの経路を制御しているかを明らかにする。 またPSIサイクリック電子伝達経路に関与するどのタンパク質がTrxの標的タンパク質であるかわかっていない。そこでTrxアフィニティクロマトグラフィー法を用いてm型Trxの標的タンパク質を同定する。これらの実験をおこなうことによってTrxによりPSIサイクリック電子伝達の制御メカニズムとその生理学的な意義を明らかにする。
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