2017 Fiscal Year Annual Research Report
NPQに伴うチラコイド膜タンパク質構造動態変化の高速AFMによる測定
Publicly Offered Research
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
17H05733
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山本 大輔 福岡大学, 理学部, 准教授 (80377902)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 蛋白質 / 生物物理 / 光合成 / ナノバイオ |
Outline of Annual Research Achievements |
1 光合成膜試料作製条件の探索 高速原子間力顕微鏡(AFM)測定に適する光合成膜試料(ホウレンソウならびにクラミドモナス由来)の調製を行った。ホウレンソウ由来グラナ膜については、試料作製条件を探索することで、基板に吸着する夾雑物を大幅に低減させるとともに、基板への吸着効率が高いグラナ膜試料を得ることができた。これにより、高速AFM測定を効率よく行うことができるようになり、膜中には光化学系IIのダイマー構造を観察することができた。さらに、得られた試料中にはグラナ膜と同時にストロマラメラを観察することもでき、ストロマラメラ中にはATP合成酵素のF0と考えられるリング構造が認められた。クラミドモナス由来チラコイド膜については、膜中で側方拡散する粒子を観察することができたが、高速AFM測定により明瞭な分子構造を得るには至っていない。膜中に観察される構造と比較するため、可溶化し精製した膜タンパク質の高速AFM測定を行った。光捕集蛋白質複合体(LHCII)を脂質膜に埋め込み、LHCIIと考えられる粒子を膜中に観察することができた。 2 溶液交換システムの構築 pHなどの溶液条件を変化させながら高速AFM測定を行うための溶液交換システムを構築した。カンチレバーホルダの両側に穴を設け、そこにチップを差し込むことでペリスタポンプを用いて高速AFMのカンチレバーホルダへの送液と排出を同時に行える構造とした。このシステムを用いて、光捕集蛋白質複合体(LHCII)の凝集状態変化の過程を観察した。低イオン強度時にはマイカ基板上で分散していたLHCIIが、溶液のイオン強度が上昇するとともに凝集していく様子を観察することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高速AFM測定に適したホウレンソウグラナ膜の調製法を確立するとともに、pHなどの溶液条件の変化に伴う複合体構造の変化を直接観察するための溶液交換システムを構築することができた。一方、クラミドモナス由来のチラコイド膜については、高分解能観察が可能な試料作製条件の探索は終了していない。また、暗条件下での観察を可能にするための高速AFM光学系の再構築は、本年度中に完了する予定であったが、進捗が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
チラコイド膜試料の暗条件下での測定を可能にするために、高速AFM光学系の再構築を早期に完了させる。高速AFM測定を効率よく行うためのホウレンソウ由来グラナ膜試料の調製方法はほぼ確立できたため、グラナ膜中の光合成膜タンパク質複合体の観察を積極的に進める。膜内における複合体構造を観察するとともに、本年度に構築した溶液交換システムを用いて観察途中に溶液条件を変化させ、膜内の分子にどのような変化が生じるか測定する。クラミドモナス由来チラコイド膜については、引き続き高速AFM測定のための試料作製条件を探索する。また、野生株、PSI欠損株、PSI, PSII欠損株のチラコイド膜を用いて、本年度観察された膜内拡散分子を同定する。これに加えて、精製膜タンパク質を高速AFM測定し、膜中に観察される構造と比較する。
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