2017 Fiscal Year Annual Research Report
CAST/ELKSの機能制御から捉える網膜シナプスのスクラップアンドビルド
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic regulation of brain function by Scrap & Build system |
Project/Area Number |
17H05741
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
大塚 稔久 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40401806)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
アクティブゾーンタンパク質CASTおよびELKSは網膜のリボンシナプスにも発現・局在する。リボンシナプスは、網膜シナプスの特徴的なアクティブゾーンであり、網膜視細胞からの神経伝達物質の放出を時空間的に厳密に制御している。そこで、本研究では、網膜神経伝達におけるCAST/ELKSファミリーの役割、特にリボンシナプスの形成、維持、破綻(スクラップ&ビルド)における役割の解明を目的とする。前年度までの研究過程で、CAST/ELKSダブルノックアウトマウスの網膜解析のデータをまとめ論文投稿を行った。そこでは、通常のダブルノックアウトに加え、生後発達の段階でELKSが欠損してダブルノックアウトになる条件付きノックアウトマウスの網膜解析も進めていた。本年度は、投稿論文がリバイスとなったため、コメントに対応する追加実験を主に行った。具体的には、条件付きダブルノックアウトマウスで見出された視細胞死がどのようなメカニズムで引き起こされるのかを明らかにする目的で、TUNEL法を用いた形態学的解析を進めた。さらに、網膜特異的にGCaMPを発現させるためのAAVベクター構築を進め、光応答による双極細胞の活性化をモニターできる系の確立を試みた。具体的には、双極細胞に特異的に発現させるためのプロモーターの選定を進めるとともに、共焦点レーザー顕微鏡にLED刺激が可能となる簡便な装置開発を行った。さらに、網膜視細胞からの神経伝達物質の放出異常について、パッチクランプ法を用いてプレシナプスのカルシウムチャネルに着目した解析を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TUNEL法による解析から、生後発達の過程でCAST/ELKSダブルノックアウトになるマウスの網膜では、野生型に比べて顕著にTUNELシグナルの増加が見られた。このことから、この視細胞の細胞死はアポトーシスによる細胞死であることが示唆された。次に、双極細胞特異的に発現させるためのプロモーターに関しては、先行研究において、グルタミン酸受容体であるmGluR6のプロモーター領域が適しているとの報告があったので、本プロモーター(エンハンサーIn4s-In3を加えて一部改変)とGCaMP6fをつなげたAAVベクター構築を行った(AAV-In4s-In3-mGluR6-GCaMP6f))。予備的な発現実験では、網膜双極細胞において十分な発現がみられた。さらに、パッチクランプ実験については、CASTノックアウトおよびCAST/ELKSダブルノックアウトの視細胞(杆体細胞)において、カルシウムチャネルによる電流密度が顕著に低下することを見出した。 以上の成果から、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
CAST/ELKSダブルノックアウトマウスの網膜では、異所性のシナプス形成に加えて、グリア細胞の顕著な活性化が見られており(未発表データ)、グリア細胞の役割についても解析を進める予定である。GCaMP6のウイルスついては、十分なタイターが得られており、LED刺激強度の条件検討が済み次第、当該ウイルスを網膜双極細胞に発現させ、光刺激時におけるカルシウムシグナルの増減を測定し、定量化する。CAST/ELKSダブルノックアウトマウス網膜の表現型は、難病である網膜黄斑変性症の特徴とも類似しており、モデルマウスとしての確立を目指し、より詳細な細胞・組織レベルの解析をすすめる。具体例の一つとして、遺伝性の網膜黄斑変性症の原因遺伝子が幾つか知られており、これらの遺伝子産物とCAST/ELKSとの相互作用を生化学的に解析する予定である。
|
Research Products
(8 results)
-
[Journal Article] Mutations in bassoon in individuals with familial and sporadic progressive supranuclear palsy-like syndrome2018
Author(s)
Yabe I, Yaguchi H, Kato Y, Miki Y, Takahashi H, Tanikawa S, Shirai S, Takahashi I, Kimura M, Hama Y, Matsushima M, Fujioka S, Kano T, Watanabe M, Nakagawa S, Kunieda Y, Ikeda Y, Hasegawa M, Nishihara H, Ohtsuka T, Tanaka S, Tsuboi Y, Hatakeyama S, Wakabayashi K, Sasaki H.
-
Journal Title
Scientific Reports
Volume: 8
Pages: 819
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-