2017 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚系シナプスのスクラップ&ビルドによる回路機能制御
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic regulation of brain function by Scrap & Build system |
Project/Area Number |
17H05753
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
坂場 武史 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (80609511)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シナプス / 神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は聴覚系の研究とそれ以外の研究で当該領域と関連する研究成果があった。 (1)ラット下丘は脳幹からの入力と対側の下丘からの2つの入力がある。聴覚入力開始以前(P9-11)では前者は連発刺激に対してシナプス応答の短期抑圧、後者は短期促通をした。聴覚入力開始以後(P15-18)では、両者の短期シナプス可塑性はほぼ消失し、連発刺激に対して比較的一定の応答を示すようになった。また、シナプス後部NMDA受容体が発達に伴ってより早い応答を示したが、応答の振幅自体は変化がなかった。一方でAMPA受容体の応答には変化がなかった(論文投稿中)。これらの変化は聴覚系脳幹とは共通性があるもの(短期可塑性の消失)、異なるもの(受容体の応答特性の変化)があった。下丘や聴覚系脳幹で聴覚入力自身が応答の変化を決定するかそうでないかは今後決定しなければならない。 (2)海馬苔状線維シナプス前終末においてパッチクランプ直接記録による膜容量測定と全反射蛍光顕微鏡におけるシナプス小胞動態観察を組み合わせてCa-伝達物質放出連関を測定する実験系を構築した。長期シナプス増強などに関与することが示唆されるcAMP/PKAの活性化によって、Caチャネルとシナプス小胞の距離が短縮する可能性が間接的に示唆された。これはシナプス可塑性誘導に伴って、シナプス前終末内の伝達物質放出部位において分子構造の組み換え(スクラップ&ビルド)が行われる可能性があることを意味する。今後、これをより直接的な方法で証明することが課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
聴覚系の研究に関しては当初計画の予想範囲内で進捗している。一方で、計画以外で海馬苔状線維シナプス前終末に関して、当初想定していなかった可塑性誘導時の伝達物質放出部位内での分子構造の組み換えの可能性が示唆されたため、予定以上と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
聴覚系の研究に関しては当初の計画通り下丘と聴覚系脳幹calyx of Heldとの比較を進めるとともに、電気生理だけでなく、イメージングを用いた研究を進める。 また、海馬苔状線維の研究でもCaチャネルの伝達物質放出部位内での分布の変化、放出部位の数の増減などをイメージングで直接可視化する研究を進める。 さらに、電気生理学を用いた研究で領域内での共同研究をおこなう。
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Research Products
(5 results)