2017 Fiscal Year Annual Research Report
脳発生をコントロールする細胞環境としてのリゾフォスファチジン酸シグナルの役割解析
Publicly Offered Research
Project Area | Interplay of developmental clock and extracellular environment in brain formation |
Project/Area Number |
17H05759
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
眞田 佳門 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50431896)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経前駆細胞 / 大脳新皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳新皮質の形成過程において、神経前駆細胞の細胞運命は発生時期に応じて巧妙に規定されており、神経前駆細胞は発生の進行に伴って自己複製や神経分化する。また、新たに誕生した神経細胞は、自らが置かれた領域に応じて、形態を様々に変化させながら最終目的地へと正確に移動する。これらイベントには、細胞自律的なプログラムと共に、外界からのシグナリングによるタイミングの調節が重要な役割を果たす。私共はこれまで、外部環境と神経前駆細胞とのインターフェースとして、G蛋白質共役受容体シグナリングの重要性を明らかにしてきた。その過程で、GPCRであるリゾフォスファチジン酸受容体(8種類のサブタイプが存在)の中で、リゾフォスファチジン酸受容体1(LPA1)が、神経前駆細胞が脳脊髄液と接している領域(脳室壁)に濃縮して発現することを見出した。さらに本研究により、LPA4が移動中の神経細胞および成熟中の神経細胞に強く発現していることを見出した。そこで、移動中の神経細胞においてLPA4をノックダウンしたところ、神経細胞移動が停滞した。一般的に、誕生直後の神経細胞は、複数本の短い神経突起を持ち、多極性を示すことが知られる。その後、軸索を脳室側に伸長すると共に、脳表層側に先導突起(アピカル突起)を伸ばして二極性になり、移動を開始する。重要なことに、LPA4をノックダウンした神経細胞は、多極性ステージで停止していた。このことから、LPA4を介したシグナリングが神経細胞の形態変化に関与しており、多極性ステージから二極性ステージへの転換に重要な役割を果たしていると考えられた。また、LPA-LPA4シグナルは神経細胞のアクチン骨格系の再編成に寄与し、この過程にフィラミンと呼ばれるアクチン結合分子が深く関与していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、移動中の神経細胞におけるLPA-LPA4の役割を明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の研究成果を論文にまとめると共に、神経前駆細胞に発現するLPA1の役割を解析する。重要なことに私共は、LPA1が脳脊髄液に面した脳室壁に濃縮して存在することを見出すと共に、脳脊髄液中にリゾフォスファチジン酸が存在し、神経前駆細胞の自己複製期(マウス胎生10日目)では、その濃度が低く、神経細胞の生成期(マウス胎生13日目)には増加することを見出している。つまり、脳脊髄液中のリゾフォスファチジン酸量が発生時期に応じて変容していることを明らかにしている。そこで、 脳脊髄液中のリゾフォスファチジン酸濃度が低い時期(発生初期)に、側脳室(脳脊髄液中)にリゾフォスファチジン酸を注入して濃度を人為的に増加し、神経細胞やintermediate前駆細胞の生成量に及ぼす影響を調べる。これと並行して、脳発生の様々な時期にLPA1のアンタゴニストを脳脊髄液中に導入して、神経前駆細胞の運命を調べる。また、これら処理の結果として、神経細胞の生成量や神経細胞の運命に及ぼす影響を調べる。このようなloss-of-functionおよびgain-of-functionの解析を通して、脳発生時期に応じた脳脊髄液-LPA1シグナルの生理的役割を明らかにする。
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Research Products
(6 results)