2017 Fiscal Year Annual Research Report
Spatiotemporal dynamics of developmental clocks: mathematical modeling of resynchronization process of the segmentation clock
Publicly Offered Research
Project Area | Interplay of developmental clock and extracellular environment in brain formation |
Project/Area Number |
17H05762
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
瓜生 耕一郎 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (90726241)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 体節形成 / 数理モデル / 同期 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では細胞移動、分裂、組織変形といった発生固有のプロセスが、発生時計のロバストネスに及ぼす影響を明らかにする目的で、ゼブラフィッシュ分節時計の再同期過程を、数理モデルとイメージングデータをもちいて解析する。薬剤処理により細胞間相互作用を一過的に阻害すると、遺伝子発現リズムの同期が崩れ、欠陥のある体節が生じる。そこから薬剤を除去し細胞間相互作用を回復させると、しばらく時間が経過した後、正常な体節が形成される。この過程を数理モデルによって再現していくことで、再同期過程の研究を進める。 今年度は、未分節中胚葉組織の三次元数理モデルを構築し、遺伝子発現リズムの再同期過程の数値シミュレーションを行った。構築したモデルは細胞間に働く物理的な力や細胞移動、未分節中胚葉組織の伸長過程を含み、さらに組織中での遺伝子発現パターンのダイナミクスを記述する。 実験により、正常な体節が一度形成された後で再び欠陥のある体節が現れることが示されていたが、そのメカニズムは不明であった。そこで構築したモデルを用いて数値シミュレーションを行ったところ、未分節中胚葉組織後方で発生したローカルな渦状の位相パターンが、この現象を引き起こすことを明らかにした。また、組織の長さや細胞移動速度といった組織パラメタに対して、この位相パターンの生成頻度や再同期までにかかる時間がどのように依存するかを詳細に調べた。さらに数値シミュレーションから未分節中胚葉組織の伸長パターンが再同期過程に及ぼす影響を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、三次元数理モデルを構築することができた。一度正常な体節が回復した後、再び欠陥のある体節が現れてくる現象は、分節時計の再同期過程を理解する上で重要な鍵となる。その実験結果を、構築した数理モデルで再現できた。さらにその原因となる渦状位相パターンの動力学を、組織パラメタに対する依存性を調べることで明らかにすることができた。以上のことより、本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) それぞれの発生ステージにおける組織伸長、細胞移動速度などの組織パラメタをイメージングデータから測定し、それらの定量データをシミュレーションで用いて分節時計再同期過程をより定量的に説明する。 (2) 本研究では薬剤処理によって細胞間相互作用を一過的に阻害することで分節時計のリズム同期を崩し、そこからの再同期過程を調べている。これまでの実験において、欠陥のある体節が現れなくなるまでにかかる時間が、薬剤処理をする発生ステージに応じて変化することが観察されている。この変化が、発生ステージ進行に伴った組織パラメタの変化で説明できるかどうかを、数値シミュレーションによって明らかにする。特に、未分節中胚葉の組織長の短縮、組織伸長パターンの影響に着目して解析を進める。 (3) 数理モデルからの予測では、組織後方で形成される渦状の位相パターンが、正常な体節のrecoveryを遅らせる。そこで分節時計のlive reporterを用い、組織内で渦状の位相パターンが実際に形成されるかどうかを検証する。 (4) ゼブラフィッシュでは、細胞間相互作用が機能しない変異体や収斂伸長の変異体などがすでに単離されている。これらの変異体では野生型と比べて、組織パラメタが変化していると考えられる。そこで、変異体での分節時計の再同期過程を実験と理論の両方から調べ、モデルからの予測を検証する。
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Research Products
(10 results)