2017 Fiscal Year Annual Research Report
初期胚細胞の運命決定における転写を介した時間制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Interplay of developmental clock and extracellular environment in brain formation |
Project/Area Number |
17H05783
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Research Institution | Osama Woman's and Children's Hospital |
Principal Investigator |
松尾 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 部長 (10264285)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 転写制御 / 細胞運命決定 / BET / 着床前胚 / 哺乳動物胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、マウス胚盤胞期において、栄養外胚葉、内部細胞塊、原始内胚葉、エピブラストへの運命決定過程における転写が時間的にどのように制御されているのか解明することを目的に研究を進めている。現在までに、アセチル化ヒストンと結合するBETファミリータンパク質(BET; Brd2, Brd3, Brd4, Brdtからなる)の機能をJQ1薬剤で阻害した場合、Nanogの発現(内部細胞塊及びエピブラスで発現する)が失われること、その一方で、Oct4, Gata6, Cdx2の発現は影響を受けないことを見いだしている。本年度は、下記の内容を明らかにした。 上述の4種類の細胞系譜で特異的に発現する遺伝子について、新生RNAの転写が核内で影響をうけているか、イントロンを含む蛍光プローブを用いて超解像レベルで可視化した。結果、BETの機能を薬剤で阻害した場合には、Nanog遺伝子座における新生RNA転写は、顕著に低下していたが、Oct4, Gata6, Cdx2の遺伝子座からの新生RNA転写は影響を受けていなかった。つまり、BETは、タンパク質の産生・安定性やmRNAの安定性などには影響を与えず、主に新生RNAの転写レベルでNanogの活性化に働くことが示された。実際、胚盤胞内では、Brd2及びBrd4のタンパク質が核内に特異的に分布していた。また、BETの機能阻害で変動した遺伝子群について、whole mount in situ法を用いて発現解析を行った。結果、低下した遺伝子の多くは内部細胞塊特異的に発現していたが、上昇した遺伝子の多くは、胚盤胞全体でユビキタスに発現していることが分かった。更に、これらの発現変動した遺伝子群がどのようなシグナル経路に関連しているのかIPA解析を行ったところ、胚性幹細胞の維持などいくつかの特定のシグナル経路との関連性が示めされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
核内特定遺伝子座における新生RNAの転写状態を解析するために必要な技術である蛍光プローブを用いたin situ hybridization法については、再現性の高い実験系を確立することに成功した。免疫染色と新生RNA発現を同時に解析する技術については、平成30年度も継続して条件検討をおこなう。 また、BETの機能を阻害した場合に、発現低下した遺伝子群だけでなく、発現上昇した遺伝子群についても解析対象とすることで未報告の新規な知見を得ることができた。特に、IPA解析を行うことで、BET機能に関わる未報告のシグナル経路候補を複数同定することに成功した。 更に、Brd4変異マウスを海外の公的機関から導入し、Cre及びFlpe過剰発現マウスと交配することで、既にBrd4ホモ変異胚の解析を開始できる段階にまで至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、Brd2及びBrd4欠損マウス胚を解析することで、BETの機能阻害で観察された転写機構の異常がBrd4とBrd2のどちらの分子の機能に依存しているのか、更には、それぞれの分子がどのような転写制御機能を担っているのか明らかにする。 また、IPA解析から得られたBETと関連する候補シグナル経路の活性化や遮断によって、BETの標的遺伝子の転写がどのような影響を受けるのか解析することで、BETの分子経路とその機能を解析する。 これらの解析から、発生過程における時間制御機構を解明する。
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