2017 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative phosphoproteomic analysis for the T cell receptor signaling during thymic selection of the T cell development
Publicly Offered Research
Project Area | Creation, function and structure of neo-self |
Project/Area Number |
17H05795
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
弓本 佳苗 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (30596838)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 正負の選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫機構の司令塔であるT細胞は、外来抗原だけでなく「自己(セルフ)」の異常から生じる腫瘍抗原や変異タンパク質などの「異常な自己(ネオセルフ)」を認識・排除することで体の恒常性維持を担う。こうしたT細胞の適切な識別能は、主として胸腺における「正負の選択」と呼ばれる仕組みによって決定される。T細胞がT細胞受容体(TCR)を介して抗原を認識して抗原を認識する親和性により正負の選択が実行されるが、抗原とTCR間の親和性の強弱が、T細胞に生と死という正反対のアウトプットを引き起こす「強度特異的なシグナル伝達と運命決定機構」の全体像は不明であった。 TCRを介した正負の選択刺激後のリン酸化変動を網羅的に調べるために、正または負の選択を起こす複数のMHCテトラマーで胸腺T細胞を刺激し、各々のリン酸化状態を比較した。各処理を施した胸腺T細胞抽出液と安定同位体アミノ酸培養した未熟胸腺細胞株DPK抽出液を等量混合した後、酵素消化後、リン酸化ペプチドの濃縮を行った。得られたペプチド試料をLC-MS/MS測定することで、リン酸化ペプチドの同定・定量を行った。その結果、合計8564のリン酸化部位を同定し、871のリン酸化部位は負の選択刺激によって上昇することが分かった。このうち、正の選択刺激に比べて強く上昇する部位として45のリン酸化部位を同定した。リン酸化モチーフ解析からはこれらの部位はCaMKIIによるリン酸化モチーフを含むものが多数存在し、負の選択刺激後のカルシウムシグナルの重要性を反映していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特殊なマウス(OT-1 tgマウス)を用いることや胸腺細胞のテトラマー刺激条件、リン酸化ペプチド取得条件等、検討事項や制約が考えられたが、これらの条件をクリアし、既にわれわれは、複数のテトラマー刺激を用いて、胸腺細胞を刺激することにより大規模なリン酸化データを取得している。また、これらのデータを用いた情報抽出もある程度成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
・正負の選択におけるリン酸化変動の特徴分析とシグナル伝達の解析 得られた大規模リン酸化定量データから、クラスタリングやパスウェイ解析を使用して、正負の選択を生み出す鍵となるシグナル伝達経路や因子をさらに詳細に洗い出し、T細胞の運命決定に中心的なシグナル伝達機構を提示する。 ・提示した分子機構の生理的な条件下における検証 特徴的なリン酸化の状態変化を示す分子をノックダウンした造血幹細胞を用いて骨髄キメラマウスを作製することで、T細胞の増殖・分化に与える影響を検証する。また、同分子のリン酸化部位変異体ノックインマウスの作製を進め、このマウスの免疫機能に与える影響を解析することで、個体の免疫システムとしての重要性を明らかにする
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