2017 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism that iIntegrates neo-self antigen recognition into cell differentiation.
Publicly Offered Research
Project Area | Creation, function and structure of neo-self |
Project/Area Number |
17H05805
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
谷内 一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, グループディレクター (20284573)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抗原認識 / 細胞分化 / TCRシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
当該新学術領域ネオセルフでは新たな抗原提示形態を介した抗原認識が関与する免疫応答のメカニズムを多角的な視点で解明することを中心課題に据えている。ネオ・セルフ抗原が関与する免疫応答の破綻メカニズムを解明するには、ネオセルフ抗原認識に伴う微妙な細胞内TCR信号の変化が如何に病的なT細胞分化に繋がるか理解することが重要である。本研究課題では異なるMHCを介した抗原認識がヘルパー/キラー系列決定に転換される核内制御機構をモデルとし、特にThpok遺伝子座上での制御領域上で起こる分子応答機構を解明することで、胸腺内でのT細胞分化過程でのTCR信号の差異を感知する核内装置の分子実態の同定とその制御機構を解明し、TCR信号を細胞分化制御に転換する分子機構を明らかにすることを目的に研究を計画した。これまでの先行研究からThpokサイレンサー領域がThpok遺伝子発現制御に重要であり、Bcl11b転写因子のC末端のZn-finger領域がThpokサイレンサーの機能制に重要であることを解明したことから、本研究課題では以下の2項目を明らかにすることを目的に研究を実施した。 1. Bcl11b転写因子と会合する分子の同定とBcl11b翻訳後修飾の生理的意義の解析 2. Site-specific ChIP法の応用によるThpokサイレンサー上の制御分子の同定 1についてはBirA酵素の異所制発現により生体内でBCl11bタンパクをビオチン化する実験系を構築し、Bcl11bのC末端Zn-finger領域に特異的に会合する分子を同定する。またBcl11bタンパクのリン酸化修飾がTCR信号の変換に関与するか検討を加える。2について新規実験手法として目的のゲノム領域上のタンパク質をビオチン化するOn -site BioID法を樹立し、Thpokサイレンサー上の生体分子の網羅的同定を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目1に関しては、遺伝子標的法により野生型及びC末端のZn-finger領域を欠損する変異型Bcl11bタンパクにBirA酵素認識配列を付与した変異Bcl11bタンパクを産生する変異マウス2系統を樹立し、それぞれBirAトランスジェニックマウスと交配し、生体内で野生型及び変異型Bcl11bタンパクをビオチン標識できるマウス系統を作製した。これらマウスの胸腺細胞を用い、生化学手法により実際にBcl11bがビオチン標識されていることを確認した。またTCRシグナル下流でリン酸化されるとされるBcl11bタンパク内の26個のSerine(S)/Threonine(T)残基のうちexon2内の3残基、exon4内の20残基をそれぞれAlanine(A)残基に置換したマウス、exon2及びexon4のA置換変異を併せ持つことで都合23のS/T残基をAに置換したBcl11b変異マウス系統を樹立した。 項目2については、アミノ酸変異により20nmの近位に位置するタンパクを網羅的にビオチン化出来る変異型BirA*とLexADNA結合領域(LexADB)との融合タンパク(BirA*-LexADB)をコードするcDNAを作製し、発生工学的手法によりCreタンパクの発現によるSTOP配列の除去後にRosa26遺伝子座から組織特異的にBirA*-LexADBタンパクを発現するトランスジェニック(Tg)マウスを樹立した。このマウスをThpokサイレンサー近傍にLexA認識配列を挿入したマウスと交配し、ダブルTgマウスを作製した。これら生体材料を用い、既知のThpokサイレンサー結合タンパクであるRunx、Bcl11b、Satb1のビオチン化を指標に、On-site BioID法基礎的な条件検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
項目1については、野生型及び変異型ビオチン標識Bcl11bタンパクをベイトとして、可及的速やかにアビジンビーズ利用したBcl11b会合分子の生化学的精製を行い、質量分析解析によるBcl11b会合分子の同定に移行する。その後、野生型及び変異型で会合に差がある分子に着目して会合分子の解析を進め、Bcl11bタンパクのC末端Zn-finger領域に特異的に会合する分子の候補をリストアップする。既存のデータベースを活用し候補分子の構造、機能を予想し、機能解析する分子を選定し、遺伝学的手法、分子生物学的手法を用いて機能解析を行う。またBcl11b のexon2内、exon4内のS/T残基をAに置換した変異マウスについては、初期的な表現型解析ではT細胞分化においてBcl11bの機能に大きな変化は認められなかった。今後は、23のS/T残基をAに置換したマウスの解析を終了し、速やかに論文発表を行う方針で研究を行う。 項目1については、可及的速やかにOn-site BioID法に実施の至適条件を決定していき、Thpokサイレンサー会合分子の網羅的同定を試みる。またCd4サイレンサー近傍にLexA配列を挿入したマウスも樹立していることから、On-site BioID法によるCd4サイレンサー会合分子の同定、特にRunxタンパクの局所特異的翻訳後修飾があ同定出来るか、検討を加えていく。またDNA制御領域上で形成される核タンパク複合体の直径は20nm以上あることが想定されることより、BirA*と LexA-DBとの間のヒンジ領域を延長した変異体を作製し、ビオチン化標識される核タンパクが変化するか検討する。
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Research Products
(18 results)