2017 Fiscal Year Annual Research Report
コウモリを自然宿主とするレオウイルスにおける共生機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Neo-virology: the raison d'etre of viruses |
Project/Area Number |
17H05814
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 剛 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (90324847)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レオウイルス / コウモリ / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
コウモリはSARSコロナウイルス、ニパウイルス、エボラウイルスなど多くの致死的感染を引き起こす人獣共通感染症の自然宿主として注目されている。自然宿主であるコウモリでは、一般的にウイルスはその体内で増殖するものの病原性を示さない。しかし、コウモリを自然宿主とする高病原性ウイルスのコウモリにおける共生機構については解明が遅れている。 コウモリを自然宿主とするネルソンベイレオウイルス(NBV)は、レオウイルス科に属し、10本の2本鎖RNAゲノムを有する。p17は、細胞融合活性を有するレオウイルスグループがコードするタンパク質であるが、その機能については未だ不明である。p17の機能を理解するため、NBVリバースジェネティクス系によりp17欠損ウイルス(p17-null)を作製し、解析を行った。様々なヒト、動物由来細胞株を用いて、p17-nullの複製能について解析した結果、野生型と同程度の増殖性を示した。マウス病態モデルを用いて解析した結果、p17-nullは野生型と同様に高病原性を示した。興味深いことに、自然宿主であるルーセットオオコウモリの細胞株(DemKT1)を用いてp17-nullの増殖性について解析した結果、p17-nullは野生型と比較して、複製能が顕著に低下していた。さらに、様々なp17変異ウイルスを作製し、解析したところ、DemKT1細胞における複製に重要な役割を担っているアミノ酸領域の同定に成功した。 これらの成果は、p17がコウモリ細胞における特異的な複製機構に関与していることを示唆しており、自然宿主コウモリにおけるNBVの共生機構を理解する上で有用な解析系と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ネルソンベイレオウイルス(NBV)p17が自然宿主のコウモリにおいて特異的に複製能を制御していることに着目し、p17の複製制御機構を解明することで、コウモリ種とウイルスの共生機構に関する知見を蓄積することを目的としている。 本年度は、p17のコウモリ細胞特異的な複製制御機構を理解するため、p17領域内に様々なアミノ酸変異、欠損変異を導入し、解析することで、複製制御に関わる領域の同定に成功した。また、p17に相互作用する宿主因子を同定するため、RNA-seq法を用いて解析を行い、幾つかの候補因子が得られた。 上記の成果から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.コウモリ細胞特異的複製に関わるp17の機能領域に関する研究 p17は細胞融合を引き起こすレオウイルスグループで高度に保存されている。そのため、p17の種特異性を調べるために、トリレオウイルス、ヒヒレオウイルス由来p17のコウモリ細胞における複製制御能について解析を行う。また、p17がコウモリ細胞内において、NBVのウイルスライフサイクルのどの過程に寄与しているかを明らかにする。 2.p17に相互作用する宿主因子の同定研究 前年度に引き続き、p17に相互作用する宿主因子のスクリーニング作業を行うと同時に各種スクリーニング法により、陽性反応が得られた候補因子について多角的な研究手法を用いて詳細な解析を行う。
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