2017 Fiscal Year Annual Research Report
二本鎖RNAウイルスの自己認識に関する研究
Publicly Offered Research
Project Area | Neo-virology: the raison d'etre of viruses |
Project/Area Number |
17H05817
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松尾 栄子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (40620878)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二本鎖RNAウイルス / 封入体移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、ウイルス封入体(VIB)形成過程を可視化するため、遺伝子操作法を用いて、VP6に様々な標識タグを入れたVP6-tagged IBAVを作製し、性状解析を行った。VP6のループ領域の一部 を、緑色蛍光タンパク質や、赤色蛍光タンパク質に置き換えたVP6-tagged IBAVは、複製能力を維持しており、感染細胞内でのVP6の動きを可視化することができた。さらに。VP6は感染後24時間以内にVIBへ集積することが明らかとなった。また、赤色蛍光タンパク質遺伝子に比べ、緑色蛍光タンパク質遺伝子の方が、安定してウイルスゲノム中に保持されることが分かった。 次に、一過的に緑色蛍光タンパク質で標識したIBAVを感染させ、24時間後、接種粒子とVIBの位置を観察したところ、接種粒子の近くにVIBの主要構成要素であるウイルス費構造タンパク質NS2の発現が確認されたが、既に大きくなっているVIBの中に接種粒子があるかは確認できなかった。 先行研究により、荷電アミノ酸を多く含むオルビウイルスVP6のループ領域のアミノ酸の種類は重要であるが、配列そのものの重要性は低いことを示唆する結果を得ていた。本研究ではさらに、この領域を詳細に解析するため、欠損変異体を数種作製し、複製能力濃霧を調べたところ、少なくとも荷電アミノ酸6個を含む任意の15個のアミノ酸があれば、複製能を維持でき、本領域はゲノムの選択性には関与しないことが示唆された。 最後に、IBAV VP6が他種のオルビウイルスのVIBに移行するかを調べるため、機能的なIBAV EGFP-VP6を恒常的に発現する培養細胞に、IBAV、AHSV、BTVおよびムコウイルス(MUV)を感染させたところ、IBAVとBTV感染細胞内では多くのVIB様構造が観察されたが、AHSV、MUVではVIB様構造の形成は確認されたが、BTVほど顕著ではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、本年度中にMUVの遺伝子操作法の確立に着手する予定であったが、分与手続きに時間がかかったため、 MUVを入手できたのは、年度末であった。そのため、リバースジェネティクス法確立のキーポイントであるMUVの性状がIBAVと同等であるかを確認する作業 に着手することしか出来なかった。また、遺伝子組換え実験許可が遅れたため、VP6の可視化のための蛍光タンパク質の安定性を高めるための実験に予想以上に時間がかかってしまい、Live-imagingで動態解析をすることが出来なかった。 しかし、その代わりに、IBAV VP6の恒常発現細胞等を用いた実験や、来年度予定していたVP6のループ領域の解析等を前倒しにしたため、全体としては、大幅に遅れた訳ではなく、やや遅れつつも順調に研究を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、遅れているMUVのリバースジェネティクス法を確立し、IBAVとは異なる蛍光タンパク質で標識したVP6-tagged MUVを作製する予定である。また、VP6-tagged IBAVを用いたIBAV粒子およびVP6の動態解析に着手する。さらに、研究協力者であるロンドン大学(LSHTM)のRoy教授の協力のもと、ブルータングウイルス(BTV)、アフリカ馬疫ウイルス(AHSV)とIBAVの共感染実験を行う予定である。可能な限り迅速に、予定している実験を遂行し、成果をまとめ、発表する予定である。
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