2017 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of membrane trafficking mechanisms regulating gametophyte formation in plant
Publicly Offered Research
Project Area | Determining the principles of the birth of new plant species: molecular elucidation of the lock-and-key systems in sexual reproduction |
Project/Area Number |
17H05850
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
海老根 一生 基礎生物学研究所, 細胞動態研究部門, 助教 (90590399)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膜交通 / SNARE / 細胞分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜交通はオルガネラ間の物質輸送を担う真核生物に普遍的な細胞機能である.膜交通の分子機構はその主なメカニズムが真核生物において高度に保存される一方で,種や組織特異的な多様化があることがわかってきており,この分子機構の多様化はそれぞれの生物に特有の生命現象に深く関わっている.植物の生殖過程においても特異的に発現する膜交通制御の鍵因子が多く存在することから,膜交通が重要な役割を担っていることが知られている.我々は最近,古くから「鍵と鍵穴」に例えられ膜融合の特異性を決定するSNAREに着目した研究から,基部陸上植物ゼニゴケの精子形成時の細胞分裂においては胞子体世代で細胞質分裂を担うSNAREであるSYP1が,シロイヌナズナにおいてはこれと異なるグループのSNAREであるSYP3が細胞質分裂に関わることを見いだした.本研究では,コケ植物と被子植物における配偶子形成の際の細胞質分裂の仕組みの解明と,両者の比較による配偶子形成の進化と膜交通の多様化の関連の解明を目指している.これまでに,シロイヌナズナの花粉第一有糸分裂の分裂面にSYP11が局在すること,およびsyp3変異体でSYP11を含むSNAREの局在が異常となることを見いだし,SYP3によるこれらの輸送制御が花粉形成に重要な役割を担っていることを示した.また,ゼニゴケの精子変態期にMpSYP3が発達した液胞の近傍に局在することも見いだした.さらに,新たな「鍵と鍵穴」として,花粉管伸長時に機能するANXと,ANTHドメインをもつタンパク質であるPICALM5が,エンドサイトーシスにおける積荷(鍵)とアダプター(鍵穴)の関係にあることを示唆する結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナを用いた研究については,当初の研究予定では初年度において配偶体形成時に発現する膜交通制御因子の特定と,これらを積み荷タンパク質候補としたsyp3変異体における局在解析を予定していたが,これについては変異体における解析サンプルの作製に時間を要したため,局在解析に若干の遅れがあるものの,順調に進行している.その一方で,これらの解析の過程で当初想定していなかったタンパク質が配偶体の細胞質分裂の制御に関わることを見いだすなど,一部においては想定以上の進展を見せており,全体として予定通りの進捗を見せていると言える. ゼニゴケを用いた研究については,解析対象とする因子が配偶体形成のみならず全身で機能することが想定されたため,組織特異的プロモーターを用いた配偶体組織のみの機能欠損変異体の作出を初年度の予定として計画していた.現在公開された配偶体組織のRNAseqデータなどを参考に配偶体組織的プロモーターコンストラクトの作製を進め,実際の発現組織の確認を進めている段階で,当初の予定より若干の遅れがある.その一方で,鍵となる膜交通制御因子の局在解析を進めたところ,当初想定していなかったMpSYP3の特徴的な局在パターンが観察され,ゼニゴケにおいてMpSYP3が配偶体形成時に特異的な機能を有していることが示唆された. これらの結果から,新たな発見を見いだしつつ,全体として研究が順調に進行していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナを用いた研究では,平成29年度に引き続き配偶体形成の細胞質分裂を制御するSNAREに注目した研究を進める.具体的には,平成29年度に引き続きsyp3変異体における膜交通異常について,平成29年度においては特に雄性配偶体に注目した解析を進めたため,平成30年度には特に雌性配偶体形成時の細胞内輸送に注目した解析を進める.さらに,シロイヌナズナの配偶体形成におけるSYP11の寄与を明らかにするため,syp11変異体における配偶体形成時の表現型について,特に細胞分裂と雄原細胞のエンドサイトーシス時の膜動態に注目して解析する.また,SYP11と協調して機能すると考えられる膜交通制御因子についても,配偶子形成時の細胞内局在と変異体における細胞分裂時の動態を観察する. これに加え,新たにpicalm5変異体におけるANXの局在の詳細な解析と,生化学的な相互作用の検証を行い,両者の関係の詳細を解明する. ゼニゴケを用いた研究では,現在ゼニゴケの精子形成における細胞分裂期および精子変態期におけるSYP3の細胞内局在について,特に精子変態期のドット状構造に注目している.そこで,この構造の詳細について,免疫電子顕微鏡による詳細な解析を行う.現在のところ精子変態期に有効な抗体とタグが確立していないため,複数の抗体を用いた条件検討を中心に進める.また,これらの時期特異的に発現するプロモーターを用いた,精子形成時特異的機能阻害変異体解析の系の確立を進める.この手法を用いてSYP1およびSYP3の精子形成について,その必要性と細胞内のタンパク質輸送への影響を調べる.
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Research Products
(10 results)