2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規リシール細胞技術を用いた複数タンパク質・膜不透過性中分子の細胞内導入法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Novel measurement techniques for visualizing 'live' protein molecules at work |
Project/Area Number |
17H05870
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 昌之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50212254)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リシール細胞技術 / セミインタクト細胞 / 細胞内物質導入技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは、細胞膜を透過性にして細胞質交換を可能にした「セミインタクト細胞リシール技術」を開発し、細胞内への生体物質導入法や導入した物質の様々な細胞内生命現象への影響などを光学顕微鏡下で可視化解析するシステムを構築している。この細胞内操作システムは、多種類のタンパク質成分や膜不透過性の(天然)化合物を、同時に定量的に細胞内に導入することが可能であり、かつオルガネラや細胞骨格の構造とトポロジーが保持されているため、導入されたタンパク質(群)の様々な動的平衡状態を「真の細胞環境内に近い状態で」計測できる。今年度は、既に同定済みの「リシール効率を増加させる化合物」を用い、リシール操作に必要不可欠な細胞質から、リシールに必要な酵素(類)を抽出・同定することに成功した。これにより、細胞質の代替品として、リコンビナントタンパク質(群)を使用した、制御可能で安全な新規リシール細胞技術構築の基礎ができた。また、今年度は、従来型リシール法をもとに、膜不透過性中分子の新規細胞内導入法を開発し、知財化と論文化を行った。当該技術は、細胞質非依存的に、しかも簡便に中分子を導入できるため、in cell NMR の構造解析対象となるタンパク質を導入した細胞へ、新たに様々なタンパク質機能に影響を与える中分子(ペプチドや核酸)などの追加導入に威力を発揮すると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、先ず、改良型セミインタクト細胞リシール法の開発とその最適化を目指して以下の研究を行った。複数の細胞種で,リシール効率の向上を誘起する2種類の低分子化合物を市販薬ライブラリーなどから既にスクリーニングしていたため、それら化合物によるリシール細胞の生存率、リシール後のストレス負荷状態、リシール細胞のviabilityなどを生化学的・細胞生物学的実験により詳細に解析した。その結果、リシール操作後の細胞ストレス負荷状態は、化合物処理によっても従来のストレス負荷状態と変化がないことが分かったが、化合物処理はリシール細胞の生存率とviability(細胞のエンドサイトーシス機能などを指標にチェック)は従来法に比べて有意に改善されている事が明らかとなった。次に、この2種の化合物により活性化を受け、リシール効率を上昇させる「細胞質因子(酵素)」を抽出することに成功した。当該酵素の活性を阻害する化合物により、細胞質依存的なリシール効率は著しく低下することより、当該酵素は少なくともリシールに必要な因子の一つであると判断した。この様なリシールに必要不可欠な細胞質内の因子同定は、細胞質の代替品としてリコンビナントタンパク質を使った制御可能な新しいリシール法の開発に不可欠である。さらに、今年度は、膜不透過性中分子の新規細胞内導入法を開発し知財化のための特許申請を行い、論文として発表した。リシール細胞法によりin cell NMRなどの解析対象タンパク質などを細胞に導入後に、細胞質非依存的にしかも簡便に、中分子(解析対象タンパク質と相互作用したり,その機能を制御するペプチドや核酸分子)を細胞に追加導入する方法として利用価値が高いと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までに、「細胞環境下でのタンパク質分子の動的構造測定技術」における細胞内導入法として、「改良型セミインタクト細胞リシール細胞法」の基本プロトコルを構築できたと考えている。この改良型は、従来型の基本プロトコルに新たに低分子化合物を作用させることで達成した。改良型では、今までリシールを全くできなかった多くの細胞種のリシール効率やその生存率を飛躍的に増加させる事が分かったが、この化合物情報をもとに、リシール法に必要不可欠な「細胞質因子」を同定し、そのリコンビナントタンパク質を用いた「安全で制御可能な(素性のよく分からない細胞質成分を持ち込まないと言う意味で)」リシール細胞法を構築したいと考えている。これにより、本領域におけるin cell NMR解析対象となるタンパク質の細胞内への導入時に、余計な細胞質成分を持ち込まない制御された状態での導入が可能となり、計測シグナルのS/N比もより良くなると期待できる。また、膜不透過性中分子の細胞内導入のための基本プロトコルは既に開発済みであり、その一部は昨年度論文として発表した。当該技術は細胞質非依存的で、かつ、簡便な中分子導入法としての利点はあるが、外液の導入物質を高濃度にする必要がある。今後は、その原因を本法の導入メカニズム解析より明らかにし、膜不透過性中分子(特にペプチドや核酸の)スクリーニングなどに利用できるシステムとする。
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[Journal Article] The first successful observation of in-cell NMR signals of DNA and RNA in living human cells2018
Author(s)
Yamaoki, Y., Kiyoishi, A., Miyake, M., Kano, F., Murata, M., Nagata, T., Katahira, M.
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Journal Title
Phys Chem Chem Phys.
Volume: 20
Pages: 2982-2985
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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