2017 Fiscal Year Annual Research Report
抗体の分子認識を契機とする補体系の活性化を活写する
Publicly Offered Research
Project Area | Novel measurement techniques for visualizing 'live' protein molecules at work |
Project/Area Number |
17H05893
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
谷中 冴子 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (80722777)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 補体 / 抗体 / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体が標的細胞表面の抗原と結合して膜表面上に集積すると、補体系が活性化して、最終的に膜に孔をあけて破壊する。本研究では、この一連の過程について高速原子間力顕微鏡(AFM)を利用して可視化し、NMR分光法がもたらす構造情報とあわせて補体活性化機構を理解することを目指している。今年度は、脂質膜上の補体活性化モデル系構築するため、糖脂質合成と安定同位体標識技術を駆使し、計測に必要な試料調製を行なった。 抗体の標的となる糖脂質として、LewisX セラミド誘導体およびガングリオシドGM1 を合成した。抗体については、それぞれの糖脂質を認識するIgG とIgM の産生系を構築し、これらモノクローナル抗体を大量に調製した。そこで、得られた試料を用いて高速AFM観測に取り組み、抗原を含む脂質膜上でIgGが規則的な6量体構造を形成する明瞭な像を得ることができた。さらには、IgGの6量体構造上における補体因子C1qの結合解離の様子を観測することに成功した。 一方、NMR 計測のために、安定同位体標識を施した抗体の調製を行い、抗体のFc領域について血清中での観測に取り組んだ。その結果、Fc領域に対して血清中のポリクローナル抗体が相互作用することが明らかとなった。IgGの分子量は15 万と大きく、13C/15N 標識のみでスペクトル解析を実施するのは困難である。そのため、ロイシン残基選択的に立体整列同位体標識を施したサンプルを取得し、そのスペクトルを観測した。その結果、全長のIgGを対象とし、すべてのロイシンのメチル基シグナルを観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度に行う計画であった、試料調製が予定よりも早く進行し、抗体の標的となる糖脂質(LewisX セラミド誘導体およびガングリオシドGM1 )と抗体(糖脂質を認識するIgG とIgM)について、順調に合成および産生系を立ち上げることができた。その結果、当初の計画以上に進展し、得られた試料を用いてAFM観測を行うことが出来た。AFM観測の結果、抗原を含む脂質膜上でIgGは規則的な6量体構造を形成し、その上に補体因子が結合する描像を明らかにすることができ、計画以上の成果を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画を更に推進し、得られた試料を用いてAFM観測に取り組む。これまで観測されているIgGの規則的な6量体構造と補体因子の相互作用について詳細な解析を行うとともに、他の糖脂質と抗体の相互作用についても観測を行う。またNMR計測についても得られた試料を用いて抗体と糖脂質との相互作用の解析を行う。
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