2017 Fiscal Year Annual Research Report
眼球・頭部運動系における座標系と機能的シナジーの中枢神経基盤
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding brain plasticity on body representations to promote their adaptive functions |
Project/Area Number |
17H05902
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
杉内 友理子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (30251523)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 筋シナジー / 頚筋 / 前庭頚反射 / 半規管 |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑な随意運動制御を効率的に行うために、中枢神経系は筋シナジーを形成し、自由度を減少させているという考えが一般的に広く受け入れられている。しかしながら、中枢神経系内における筋シナジー形成の神経基盤がどのようなものであるかを示した生物学的実験データは少ない。本研究は、前庭脊髄反射系をモデルとし、筋シナジー形成の中枢神経機構の実体を明らかにしようとするものである。 頭部に回転刺激が加わりある半規管が刺激されると、その半規管の存在する平面内で、与えられた外乱である頭部の回転と反対の方向に代償性の眼球と頭部回転がおき,元の眼球位置と頭位に立ち直る反射性の運動が起こることが知られており、それぞれ前庭動眼反射、前庭頚反射と言われる。 前庭頚反射では、刺激された半規管からの情報が、その状況にふさわしい頭部の立ち直りを起こすための特定の頚筋群に伝えられる必要がある。これらの筋群は、特定の方向に頭部を回転させるという共通の作用をもっているので、一つの「機能的シナジー」を形成しているといえる。この筋シナジーが中枢神経内のいかなる機構によって決定されているかについては、解明されていない。前庭脊髄路は系統発生学的に古く、中枢神経系による運動の制御機構の原型である可能性がある。本研究の目的はこの前庭脊髄反射系において筋シナジーの中枢神経機構の実体を明らかにすることである。 今年度はまず、各頚筋運動ニューロンに対し、左右6個の半規管からの入力がどのように収束するかを明らかにした。ネコにおいて鰓弓由来の屈筋(胸骨乳突筋、鎖骨乳突筋)の運動ニューロンへの半規管入力様式を明らかにし、固有背筋由来の筋の入力様式と比較した。その結果、固有背筋由来の伸筋である板状筋と、鰓弓由来の屈筋である胸骨乳突筋および鎖骨乳突筋が共通の入力パターンをもつことが明らかとなり、これらが筋シナジーを形成している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は前庭脊髄反射系において筋シナジー形成の中枢神経機構の実体を明らかにすることである。今年度は、左右6本の半規管から、さまざまな頚筋の運動ニューロンへの収束様式を解析した。得られたデータを逆方向に解釈すると、各半規管からの出力がどのような頚筋に出力されるかを示唆する重要な手掛かりとなった。これにより来年度行う形態学的な解析の効率と精度を上げるための有力な基礎データが得られたことになり、順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の解析により、さまざまな頚筋運動ニューロンに対する、左右6本の半規管からへの入力の収束様式が明らかとなった。このデータにより、各半規管から興奮性および抑制性の出力を行う頚筋の種類が推定された。そこで、今後はそれらが単一の前庭脊髄路細胞により支配されていることを形態学的に検証し、中枢神経系内における筋シナジー形成の神経基盤の一つであることを証明する。
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Research Products
(3 results)