2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the synergy reformation mechanism for neural function recovery
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding brain plasticity on body representations to promote their adaptive functions |
Project/Area Number |
17H05904
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
舩戸 徹郎 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40512869)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 筋シナジー / 姿勢制御 / 運動制御 / 神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトや動物が歩行や直立などの全身運動を行うとき、複数の関節や筋を協調して動かす協調関係(シナジー)が見られる。このような運動中に観察される運動要素の協調関係は、動作生成において冗長な身体を動かすための低次元表現となっており、脳内身体表現を反映していると考えられる。シナジーは脳卒中及び小脳疾患によってそれぞれ特徴的に変化すると知られており、シナジーを指標とすることで効果的なリハビリテーションの構築が期待できる。本研究では(1)神経障害に伴う(シナジーなどの)運動機能と制御機能の低下の関係(メカニズム)を解明し、(2)神経疾患患者の筋シナジーの評価による効果的なリハビリテーション手法を構築することを目指して研究を行っている。本年度は(1)直立動作の解析による無痛無汗症患者の姿勢制御系の解明、(2)脳卒中患者の筋シナジー解析によるシナジー解析のリハビリへの応用、を目指して研究を行い、以下の研究結果を得た。 (1)無痛無汗症患者の直立動作を計測し、直立中の重心動揺の特徴を調べた。前後方向の重心同様におけるパワースペクトラムを推定した結果、健常者で報告されている0.4Hz付近の周波数成分が無痛無汗症患者ではほとんど見られないという結果が得られた。0.4Hz付近の周波数成分は姿勢制御においてフィードフォワード的な制御によって構成されていると指摘されており、患者においては、フィードフォワード制御が低下している可能性が考えられる。 (2)脳卒中患者のFMAタスク中の筋シナジーを解析し、健常者のシナジーとの比較を行った。その結果、患者の筋シナジーでは健常者の複数の筋シナジーが融合するように変化が起きていた。また、このような融合は重症な患者ほど顕著に生じていた。このことから、筋シナジーの融合度を基に、患者の重症度を評価できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究として、(A)歩行の筋シナジーに特徴的な変化が見られる無痛無汗症患者の(A1)動作解析及び(A2)力学解析から、機能低下のメカニズム明らかにすること、(B)動物の運動解析によってその神経メカニズムにアプローチし、それを元にリハビリテーションの手法構築への道筋を作ることを目標としていた。これらの研究はそれぞれ以下のように進捗している。 (A)無痛無汗症患者の機能低下のメカニズムを調べるために、直立中の姿勢制御を計測し、その動作の特徴として、周波数成分の中に健常者と異なる特徴的な変化:0.4Hz付近の周波数成分の低下が見られた。この結果と、力学解析によって得られた0.4Hz付近の動作に現れる制御の役割:フィードフォワード制御の成分との関係から、無痛無汗症患者の機能低下、及び筋シナジーの変化にフィードフォワード制御の低下が関わっている可能性を示すことができた。このように、動作解析と力学解析をあわせることによってメカニズムにアプローチをすることができていることから、おおむね順調に伸展していると言える。 (B)動物の運動解析については、現在小脳梗塞ラットの動作の筋電を計測し、筋シナジーを解析することによって、小脳における神経回路と筋シナジーの関係を明らかにしようとしている。筋シナジーの解析に必要な多数の筋電を同時に計測するのが難しく、研究は順調ではあるが、予定よりは遅れがでている。 以上のように進捗としては、ヒトの研究は順調であり、ラットの実験において多少遅れがでている。一方で、最終目標であるリハビリテーション手法の構築について、以下の新たな結果が得られた (C)脳卒中患者の筋シナジーの解析を新たに行い、筋シナジー解析をリハビリテーションに結びつけることができる可能性が得られた。このように目標を推進する新たな結果が得られているため、全体として順調に伸展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに無痛無汗症患者の筋シナジーにおける特徴と、動作における機能低下にフィードフォワード制御の低下が関わる可能性が明らかになり、また、脳卒中患者の筋シナジーの解析から、筋シナジーを元にしたリハビリテーション構築への道筋をたてられるようになった。今後の研究としては、引き続き無痛無汗症患者の解析をすすめる他、(A)ラットの筋シナジーの解析と歩行の力学モデル解析、(B)脳卒中患者の筋シナジー解析によって、機能低下が起こる要因とリハビリテーション応用を目指した研究を行う。具体的には以下の研究を行う。 (A)感覚フィードバックを元にフィードフォワード制御入力を作る学習制御によって力学モデルを構築し、感覚入力の変化がどのような過程で制御系に影響を与えるかを調べる。力学モデルの挙動と感覚処理系に障害をもつ無痛無汗症患者及び小脳梗塞ラットの挙動を比較することで、制御系におけるどのような変化が運動機能、及び筋シナジー機能の変化をもたらしたかを明らかにする。 (B)異なる重症度の脳卒中患者の筋シナジーを解析し、脳卒中に伴う運動機能の低下と筋シナジーの関係を定量的に明らかにする。これまでに、脳卒中患者では筋シナジーが統合するように変化することを示しており、この統合度合いが重症度を上手く反映しているかを調べ、さらに統合度合いの評価方法の中で最も重症度合いを反映しているものを調べることで、筋シナジーを用いて重症度を評価できるようにする。このような情報を元に、様々なリハビリテーションがどのように症状を変化させるかを筋シナジーで評価することで、効率的なリハビリテーションを行える手法の構築を目指す。
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Research Products
(17 results)