2017 Fiscal Year Annual Research Report
Cross cultural exposure and personalized value development through adolescence: Qualitative and quantitative researches on both self-acceptance and acceptance of others
Publicly Offered Research
Project Area | Science of personalized value development through adolescence: integration of brain, real-world, and life-course approaches |
Project/Area Number |
17H05925
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阪上 優 京都大学, 環境安全保健機構, 准教授 (50437290)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 主体価値 / 思春期 / 自己受容 / 共感性 / 多文化間精神医学 / メンタルヘルス / 予防医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 大学生の異文化体験におけるメンタルヘルスに関する量的研究 ① 留学前後で,認知的再解釈によるストレスコーピングスタイルが上昇していた. 外界の変革よりも自己の認知スタイルを変えることによって適応する方策を, 留学により身につけた可能性がる.② 留学前後で, 未熟な防衛スタイルが上昇していた. 一過性に強いストレスがかったことによる混乱と退行が, 未熟な防衛スタイルを強化した可能性が考えられる.③ 留学前後でGHQが悪化するリスク因子として, 既往歴と現病歴が有意であった. ただし既往歴に関しては, 精神疾患か否かには無関係であった. ④ SOCや自尊感情は自我の中核に近いため堅牢性が高く, 暴露事象から時間的に緩徐に変化する一方, ストレスコーピングや防衛スタイルは即座に変化する可能性も考えられる. 2. 異文化暴露が及ぼす自己受容と他者受容の変容に関する研究 ① 留学前の自己受容は, 自我の一貫性と強い関連が認められたが, 留学後は首尾一貫性との関連は弱まり, 他者受容との強い関連が示された. ② 留学前は, 自己を受け入れるためには自我の一貫性がその拠り所であったと考えられるが, 留学後は, 他者を受け入れることが自己を受け入れることと強く関係しており, 自己受容と他者受容が近接している可能性が考えられ, 留学後の社会との関わりを重視する価値観と関連している可能性が考えられる. 3. 大学生の主体価値についての基礎的研究と自由記述に関する内容分析 ① 最も重要な価値については, 【現在の学業】や【人間関係(人との出会い・つながり)】次いで【健康】を重要視する回答が多く見られた. ② 女性は【人間関係】を, 男性は【現在の学業】や【将来のキャリア形成】を重要視する傾向があった. ③ 価値観が大きく変化した経験は, 50.2%の学生が「ある」と回答した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度内にデータは概ね取得済みであり、データクリーニングも進捗している。平成29年度後半からはデータの解析と論文執筆にも着手できており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 大学生の異文化体験におけるメンタルヘルスに関する量的研究 本研究は既に1000名以上のデータを取得済みがあり, 現在はデータクリーニングと探索的解析を行っている。これまでの粗解析からは, 留学前後で, ストレスコーピング尺度および自己防衛スタイルに変化が認められた。 加えて, 留学前後で全体的健康度(GHQ) のばらつきは拡散する傾向にあった。さらにGHQ悪化のリスク要因として, 既往歴・現病歴との著しい関連が示唆された。今後は, 早急に詳細解析を行い, 論文執筆を進める予定である。 2. 異文化暴露が及ぼす自己受容と他者受容の変容に関する研究 本研究は現在, データクリーニングと探索的な解析を行っている段階である。留学前は, 自己受容と他者受容はごく緩やかな相関しか認められないが, 留学後は自己受容と他者受容は極めて強い相関が認められた。 一方, 留学前には, 自己受容と首尾一貫性は強い相関が認められるが, 留学後には相関が緩やかになっていた。 研究3の留学後の価値の変容と考え合わせると, 自己受容と他者受容の近接は, 留学経験による社会との関わりを重要視する価値観と関連している可能性が考えられる。本研究もデータクリーニングが終了次第, 詳細解析を行い, 論文化を急ぎたい。 3. 大学生の主体価値と価値の変容に関する基礎的研究と自由記述に関する内容分析 価値の変容体験については, 概ね半数の被検者が経験しており, 質的には3種類に大別されることが判明しつつある。価値変容体験の有無による各指標の2群間比較や, 変容体験別の多重比較を行い, 論文化する予定である。
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