2017 Fiscal Year Annual Research Report
主体価値形成不全の生物学的基盤 -思春期アパシーと炎症-
Publicly Offered Research
Project Area | Science of personalized value development through adolescence: integration of brain, real-world, and life-course approaches |
Project/Area Number |
17H05931
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 俊太郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20616784)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 思春期 / アパシー / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回、東京都内3自治体で行われているコホート研究(東京ティーンコホート)に参加している687名の思春期児童を対象に研究を行なった。東京ティーンコホートは、平成24年に開始した本邦初の大規模思春期コホート研究である。地域代表標本である10歳児童(とその主養育者)を対象に第一期調査が、その2年後に、12歳時点での追跡調査(第二期調査)が行われ、高い追跡率を維持している。12歳時調査にて採取した尿検体より、EIA法を用いて尿中インターロイキン-6濃度を測定した。尿検体は、児童が早朝に自宅で採取し、すぐに冷凍保管したものを、冷凍状態のまま回収した。また、同じ尿検体より、酵素法にて尿中クレアチニン濃度を測定した。アパシーの代替指標として、SDQ(Strength and Difficulty Questionnaire)を用いた。SDQ下位項目を従属変数、尿中インターロイキン-6濃度(クレアチニン補正)対数値を独立変数とした回帰分析を施行した。 その結果、尿中インターロイキン-6濃度は、感情の問題、多動不注意、行動の問題、対人関係の問題などとは有意な関係を示さなかった。一方で、尿中インターロイキン-6濃度と向社会的行動の間には、有意な負の関係がみとめられた。この関係は、性別、月齢、BMIなどの影響を調整しても有意であった。 つまり、尿中インターロイキン-6濃度は向社会的行動(積極的なpositive behaviour )と負の関係を示した。一方で、インターロイキン-6と感情や行動の問題(積極的なnegative behaviour )との間に有意な関係はみられなかった。このことは、尿中インターロイキン-6濃度がアパシー(積極的な行動の減少)と関係している可能性を示唆する。今後、尿検体解析を進め、より大規模サンプルにおける尿中インターロイキン-6濃度と向社会的行動の関係を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、大きなトラブルなく、一般思春期児童の研究サンプルにおいて、アパシーと炎症の関係についてのプレデータ解析を行うことができた。尿検体からの炎症関連指標の解析を無事に行うことができた。アパシーの代理指標を選定し、これと炎症関連指標との連結データの作成に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、さらにデータ数を増やした解析を目指す。一般思春期児童から回収した早朝尿検体をさらに数百検体解析し、尿検体から炎症関連指標を測定する。解析の結果得られた炎症関連指標データとアパシー関連指標データを統合し、大規模データによる関連解析を行う。
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