2017 Fiscal Year Annual Research Report
他個体認知・社会性および空間認知の基盤となるシナプス分子SEPT3の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
17H05945
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上田 奈津実 (石原奈津実) 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (60547561)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症、自閉症などの精神神経疾患、発達障害は、今後ますます顕在化する社会問題である。これらの個性は、標準的な個性と比べて異常もしくは超正常な特性を示すモデルマウスを用いた研究から、その分子基盤が明らかになる可能性がある。 重合性ヌクレオチド結合蛋白質ファミリーSEPT1-14から成るセプチン細胞骨格は細胞分裂蛋白質として発見された分子ではあるが、最終分化した神経系で最も高発現する。セプチンはアルツハイマー病(Kinoshita et al., Am J Pathol 1998)やパーキンソン病(Zhang et al., PNAS 2003)、自閉症(Barr et al., Eur J Neurosci 2004)にも関与することが示唆されており、精神神経疾患に密接に関連する重合性GTP結合蛋白質として認識されている。申請者らはセプチン機能破綻により生じる行動特性を明らかにするため、欠損マウスの系統的行動解析(自発活動量、協調運動、社会的行動、不安様行動、うつ様行動、記憶・学習など18項目)や形態解析を行い、標準的な個性と比べて認知能力、社会性において強い偏差を示すこと、認知能力に関してはスパイン(樹状突起棘)成熟の異常と相関していることを見出している。精神神経疾患においては、脳の発生発達の異常が知られており、興奮性と抑制性ニューロンのバランス異常、ニューロンの形態そのものの異常、情報をやり取りするシナプスの異常の関与が示唆されている。そこで本研究では欠損マウスの行動特性に関与する領域におけるニューロン形態やシナプス異常を精査した。その結果、特定の脳領域に限定して細胞小器官の異常が認められることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、表現型が検出できた海馬歯状回に着目し、セプチン欠損マウスの空間弁別記憶保持障害が歯状回でのセプチン欠損に起因するかの検証を目的として、セプチン欠損/野生型マウスの歯状回における局所的セプチン補填/枯渇が空間弁別記憶保持障害を救済/再現するかを精査する。 また、電子顕微鏡を用いた連続切片3次元再構築法による形態解析を進め、セプチン欠損マウスの海馬全領域(歯状回、CA3、CA1)のスパイン形態(シナプス密度、スパイン体積、PSD面積)を精査することで、表現型を示す脳領域を決定する。さらに、我々は「海馬歯状回のセプチンはスパイン内への細胞小器官の挿入、繋留、ないしは退縮に必須である」という作業仮説を立てた。この仮説を検証するため、セプチン欠損/欠乏海馬歯状回培養ニューロンを用い、スパイン内細胞小器官の動態をライブメージングで解析する。 最後に、スパイン内への細胞小器官の挿入、繋留、ないしは退縮を制御する分子メカニズムを解明するため、セプチン会合分子の網羅的同定や当該領域で発現する分子の量的変動を網羅的に探索する。
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Research Products
(4 results)