2017 Fiscal Year Annual Research Report
動的階層モデルによる行動形質の形成過程解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
17H05946
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
片平 健太郎 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (60569218)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 個体差 / 計算論モデリング / 階層混合モデル / ラット超音波発声 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,行動に表れる「個性」がどのように形成されるかを検討するための行動データ分析の方法論を構築することを目的としている。平成29年度は,行動特性の時間的変化を記述する計算論モデルとそのパラメータの個体差を統一的に扱う枠組みを構築した。特に,そのパラメータで特徴づけられる行動特性が集団において連続的に分布しているのか,あるいは質的に異なる離散的な分布でとらえられるものかをデータから判定するための手法の構築を目指した。そのために,パラメータの集団における分布が複数のクラスターからなる混合モデルを扱えるものにするよう拡張した階層混合モデルを構築し,そのパラメータ推定手法やモデル選択法を検討した。人工合成データを用いてその手法の妥当性を確認した。 実データを用いた予備的検討として,領域内の共同研究を通して,ラットの撫で刺激に対する超音波発声頻度データに提案手法を適用した。撫で刺激を与えている間のラットの50kHz超音波発声の頻度の経時的変化データを分析対象とし,その頻度を説明するパラメータの変化を記述する計算論モデルをベイズ統計学の枠組みで検討した。その結果,撫で刺激に対する感受性を示すパラメータの分布に二つのクラスターが存在することが示された。これは,ラットの撫でに対する感受性に質的な個体差が存在することを示唆するものである。提案手法により,行動データから内的なパラメータについて質的に異なる「個性」を抽出することができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は個性の形成過程に関する行動データの分析手法を確立することを目標とした。予定通りモデルは構築し,人工合成データや実データを用いた妥当性は確認できたことから,その目標は達成できたといえる。提案手法を精緻化し,個体差の発生メカニズムについて理解を深めていくことが次年度以降の課題といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はモデルの精緻化を進めながら,提案手法を他の行動データにも適用可能な手法へと拡張していく。その一環として,ラットのレバー押しによる選択行動データを記録し提案手法を適用する。広範な行動データに提案手法を適用することを通して,行動に表れる個体差についての一般化を進めていく。また,解析により明らかになってきた個体差が存在することが存在する理由を検討するために,進化モデルのシミュレーションや理論解析も組み合わせながら,「個性」の適応的な意義も検討していく。
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Research Products
(6 results)