2017 Fiscal Year Annual Research Report
Neural mechanisms underlying the effect of social cognition and aging on individual differences of human memories
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
17H05947
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
月浦 崇 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30344112)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 記憶 / 社会的認知 / fMRI / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの認知機能には多くの個人差があり,その違いがどのような要因によって生起し,それがどのような脳内機構によって担われているのかについては,多くの点が不明である.本研究では,ヒトの認知機能の中でも特に記憶の個人差に着目し,社会的要因や加齢の要因によってヒト記憶の個人差がどのように生起されているのかについて,健常若年成人と健常高齢者を対象とする機能的磁気共鳴画像(fMRI)研究から解明することを目的とする.また,脳損傷患者に対する行動学的研究も加えることで,記憶の個人差の基盤となる脳内機構について,その因果性にも迫る.
本年度の成果として,健常者を対象としたfMRI研究については,他者との競争における勝利のアウトカムに関連する記憶の基盤として,眼窩前頭皮質や線条体のような報酬系と記憶に重要な海馬との間の機能的結合の重要性が同定された.また,他者への共感の程度によって他者の記憶は影響を受け,その基盤として共感できる他者に対する記憶は腹内側前頭前野皮質と海馬との間の機能的結合が,共感できない他者に対する記憶には,側頭頭頂接合部と海馬との間の機能的結合が重要であることが示された.さらに,社会的文脈での自己参照効果は加齢の影響によって低下し,その基盤として大脳皮質正中内側部構造内の機能的結合が,加齢によって低下することと関連することが認められた.その他にも,社会的特性としての他者への共感性の高さが主観的幸福感と関連しており,その基盤としてデフォルトネットワーク内の安静時機能的ネットワークの関与が示唆された.これらの成果は国内外の学会にて発表され,現在論文の準備を進めているところである.また,脳損傷患者に対するデータについては,以前に取得していた顔記憶に関するデータの解析を進め,論文の投稿に向けて準備を進めているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画は,おおむね順調に推移している.fMRI研究については,他者との関係性によって影響を受ける記憶の基盤について,複数のfMRI研究を進め,複数の学会にて成果を発表することができた.また,加齢の効果についても国際学会にて成果を発表することができた.これらの成果については,いずれも現在論文の執筆が進められており,30年度の比較的早い時期には投稿できるものと考えている.さらに,安静時fMRIデータの解析から,社会的特性としての共感性と主観的幸福感の関係について,その基盤となるデフォルトネットワークの重要性が解明されており,こちらについても30年度の早い時期に論文を投稿できる予定である.脳損傷患者に対する検証についても,脳損傷患者に対する顔記憶についてのデータ解析が進められ,こちらも30年度中には論文を投稿できる予定である.
以上のことから,本年度の研究計画は当初の予定通りに比較的順調に進んでいると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進については,まず現在データ解析を進めて論文の執筆にとりかかっている研究については,できるだけ早期に論文のドラフトを完成させ,論文の投稿を完了したいと考えている.また,新しいfMRI研究の計画については,現在予備実験としての行動学的検証を行い,実験パラメーターの調整を進めているところであり,本実験をできるだけ早く開始したいと考えている.さらに,現在fMRIデータの取得を進めている記憶に対する加齢が与える影響についての研究では,健常若年成人のデータの取得はほぼ終了したため,今後健常高齢者に対するデータの取得を進め,今年度中の学会にて成果を発表することを予定している.
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Remarks |
研究代表者の研究室のホームページ
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Research Products
(10 results)