2017 Fiscal Year Annual Research Report
親和的な個性の獲得・制御メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
17H05956
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
岡部 祥太 自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (00747256)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 撫でる / 接触刺激 / 親和的関係性 / オキシトシン / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
社会的動物は同種間だけでなく、異種間においても親和的な関係性を構築する。このような異種への親和性を司る個性の形成・制御メカニズムを明らかにすることを本研究課題の目的とした。
研究代表者は撫でる接触刺激をラットに長期間与えることでラットの不安行動が減少し、撫で刺激に対して快情動を示すようになることを明らかにしてきた。また、撫で刺激により視床下部室傍核尾側領域のオキシトシン産生細胞が活性化することも判明していた。その一方で、これら反応性には個体ごとのばらつき、個性があることも確認していた。そこで、オキシトシン産生細胞の活性と撫で刺激およびヒトに対する反応性に関連があるか解析したところ、正の相関関係があることが判明した。とくに、撫でられた時に発声する快情動の指標となる50kHz帯超音波の発声回数とオキシトシン産生細胞の活性レベルに強い正の相関関係が認められた。このことから、視床下部室傍核尾側領域のオキシトシン産生細胞が親和的な個性の制御因子として機能していることが示唆された。
上記実験ではラットが特定のヒトとの間に親和的な関係性を構築するのかどうかはわからなかった。そこで、より長期間ラットを撫でることで、撫で刺激を与える特定のヒトに対して嗜好性を示し、親和的関係性が構築されるのか調査した。その結果、長期間撫で刺激を含む接触をヒトと繰り返してきたラットは、第三者と撫で刺激を与えた実験者とを明確に識別し、実験者に強い嗜好性を示すことが明らかになった。さらに、これらラットは自分が撫でられない状況下で他個体が撫でられる様子を知覚すると不快情動を示すことが明らかになった。これら反応性にも強い個性があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
撫で刺激によるオキシトシン産生細胞の活性と撫で刺激に対する行動学的な反応性に相関関係があり、親和的な個性の制御因子の一つとしてオキシトシンが機能する可能性が見出された。また、別の研究種目(若手B, 研究課題/領域番号15K18978)とも関連する研究により、これらオキシトシン産生細胞が帯状回皮質などに軸索を伸ばしていること、撫で刺激を与えることで島皮質が活性化することも明らかとなり、親和的な個性を司る神経ネットワークを調査するために必要な基礎データを得ることができた。
撫で刺激を与える期間をより長期間に変更したことで、ラットが特定のヒトとの間に親和的関係性を構築することや、嫉妬様行動を示すこと、さらにこれら反応性に個性があることも明らかとなり、予期していなかった興味深い研究成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. オキシトシン機能阻害実験 オキシトシンの機能を阻害することで、撫で刺激および撫で刺激を与える実験者によってもたらされる行動学的な反応(親和的な反応)が阻害されるのか検証する。
2. 親和的反応と神経活性の相関解析 オキシトシン産生細胞の軸索が存在する脳領域や撫で刺激を与えた際に活性化する脳領域の活性が親和的な反応性と相関するのか解析し、親和的な個性を制御する神経ネットワークなのかどうか検討する。さらに、他個体が撫でられている様子を見た際に示す不快情動が嫉妬様行動なのか検証するとともに、この不快情動の個体差を生み出す神経活動が親和的な個性を制御する神経ネットワークによるものなのか調査する。
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