2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規性認識機構を介する記憶アップデート基盤の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
17H05962
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
福島 穂高 東京農業大学, 生命科学部, 助教 (60645076)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 記憶アップデート / 認知記憶 / 再固定化 / 海馬 / マルチユニット記録 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、記憶をアップデートするメカニズムを明らかにすることを目的として、マウスにおける社会的認知記憶課題及び物体認知記憶課題を用いた解析を計画した。社会的認知記憶及び物体認知記憶では、マウスが探索対象を識別し、既知であるか未知であるかを判別する新規性認識機構を作動させた上で、既存の記憶がアップデートされるか、あるいは、新たな記憶が形成されるかが決定されると考えられる。そこで、この実験系を認知記憶アップデートのモデルとして捉え、行動薬理学的解析、生理学的解析を実施した。社会記憶(幼若マウスの記憶)を形成させてから24時間後のテストにおいて、テストの30分前にタンパク質合成阻害剤を腹腔内投与しても既知のマウスを識別できたことから、社会記憶が認められた。従って、社会記憶の想起にタンパク質合成が必要でないことが示唆された。一方、想起から24時間後のテストにおいては、タンパク質合成阻害により既知のマウスを識別できず、社会記憶が認められなかった。従って、タンパク質合成阻害により社会記憶再固定化が妨げられたことが示唆された。以上の解析結果は、探索対象を物体に変更した物体認知記憶課題においても同様であった。以上より、2種類の解析系において、記憶想起後に新規性認識機構が働き、遺伝子発現依存的な記憶再固定化が誘導されるという結果を得た。そこで、既知及び未知物体に遭遇した際の海馬の生理学的変化を解析するために、海馬CA1領域を標的としたマルチユニット記録を試みたが、実験系の確立に予想以上に時間を要したため、記録数が少なく評価するまでに至らなかった。しかし、これまでの恐怖記憶制御機構の解析から、記憶アップデートには海馬の活性制御機構が重要であることが示唆されているため、この解析を推進していく意義は極めて高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
行動薬理学的手法により、2種類の記憶課題において記憶アップデート機構を解析する実験系が確立された。一方、学習課題遂行中のマウス海馬領域からのマルチユニット記録を確立するために予想以上に時間を要したため、海馬の生理学的変化と記憶アップデート機構の因果関係について評価することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
マルチユニット記録法により、既知及び未知物体に遭遇した際のマウス海馬の生理学的変化を解析する。実際には、脳波と海馬CA1領域の神経活動との因果関係、記憶の強度と海馬CA1領域の神経活動の関係について検討する。また、記憶形成時と記憶アップデート時の比較、記憶能力が向上した遺伝子改変マウスを用いた解析も計画している。
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Research Products
(6 results)