2017 Fiscal Year Annual Research Report
不安の個体差を担うシナプス機構の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
17H05964
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
小林 克典 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10322041)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 行動学 / 生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では複数のモデルの電気生理学解析と行動解析に基づいた数理モデル構築によって、不安様行動の個体差が海馬シナプス伝達の個体差によってどこまで説明可能かを明らかにすることを目的としている。今年度は主に、不安様行動と苔状線維シナプス短期可塑性の関係の一般性の検討と、不安様行動に寄与する他シナプスの要因について解析を行い、以下の結果を得た。 1.電気痙攣刺激によって歯状回→CA3シナプスの短期可塑性の変化が生じることが過去の解析から明らかになっている。このモデルを用いて行動解析を行ったところ、3種類の異なる行動テストにおいて不安様行動の変化が見られた。短期可塑性の変化は電気痙攣刺激の回数に依存するため、電気痙攣刺激の回数を操作して行動変化に対する影響を検討したところ、一部の行動変化において短期可塑性の変化との関連が示唆された。 2.豊かな環境での飼育によって歯状回→CA3シナプスの短期可塑性が変化することを示唆する結果を得た。飼育期間を最大5週間まで変化させて最適の条件を検討しつつ、短期可塑性以外のシナプス機能に対する影響を解析し、過去に解析していきた他のモデルとの共通点を検討している。 3.歯状回→CA3シナプスに加えて、CA3→CA1シナプス及び貫通路→歯状回シナプスに対する電気痙攣刺激の効果を検討した。どちらのシナプスでも歯状回→CA3シナプスとは異なる結果が得られているが、特にCA3→CA1シナプスは歯状回→CA3シナプスよりも刺激感受性が低いことを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた行動解析、他のモデルの検討や他シナプスの検討などが順調に進んでいる。特に行動解析はかなり進んでおり、当初の予想を支持する結果も見られている。海馬内への薬物投与等の解析については結果が得られていないが、あらかじめ条件検討に時間がかかることが予想されていたため、全体としてはおおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の解析を継続しつつ、行動変化とシナプス伝達の関係をさらに直接的に検討する。複数のモデルマウスにおいて、短期可塑性と同時にセロトニンによるシナプス修飾や細胞体興奮性が変化する。不安様行動変化に寄与する要因としてこれらが除外可能かどうか検討する。歯状回→CA3シナプスの調節に寄与する5-HT4受容体のノックアウトマウスを用いて解析を行う。電気痙攣刺激などによるモデルを作製し、不安様行動の変化を解析する。また、歯状回顆粒細胞の興奮性変化に寄与するT型Ca2+チャネルの阻害薬を用いて不安様行動に対する急性効果を検討する。さらに、苔状線維シナプスにおける短期可塑性の変化と不安様行動の因果関係の検討のための解析を行う。短期可塑性に特異的に関与する分子の阻害薬投与又はshRNAの導入、もしくは短期可塑性を比較的選択的に抑制するCa2+キレーターEGTA/AMの苔状線維シナプス形成領域に対する導入が、不安様行動に及ぼす急性効果を検討する。以上の解析結果に基づいて、電気生理学的データからマウスの不安様行動を予測する数理モデルを構築する。
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Research Products
(4 results)