2017 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠期の外環境酸素による子の「個性」創発機構
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
17H05965
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
酒井 大輔 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (90632646)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低酸素 / 神経発生 / Hif1α |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は最近、低酸素応答のマスター遺伝子であるHif1αをマウスの神経上皮細胞で特異的に欠損させると、抑制性の神経伝達物質であるGABA陽性の細胞が大脳の基底核隆起近傍に過剰に誘導されることを発見した。また、この細胞が大脳皮質層へと移動する抑制性神経であることが示唆された。これらの結果は、胎内の酸素濃度によって仔の脳内における興奮と抑制の神経活動のバランスが変動することを示唆している。そこで本研究では、Hif1αによる抑制性神経細胞の発生制御機構と抑制性神経の過剰産生が仔の行動に与える影響について調べた。まず、Hif1αの神経上皮細胞特異的なノックアウトマウス(Hif1α-KO)と野生型の大脳腹側組織をサンプリングし、Hif1αの欠損により発現が変動する遺伝子の同定をDNAマイクロアレイ解析を用いて行った。その結果、2.5倍以上の発現変化を示し、p値が0.05未満の遺伝子が複数同定された。さらにin situ hybridizationと定量PCRにより発現変動の検証を行った。そして、Hif1αの欠損により大脳腹側での発現が変化する3種類の遺伝子が同定された。次に、過剰に誘導されたGABA陽性細胞の性質を調べるために、マーカーを用いた免疫染色を行った。その結果、過剰なGABA陽性細胞は線条体内に誘導されており、線条体の抑制性神経のマーカーであるCtip2に陰性であった。また、尾側基底核隆起由来の抑制性神経のマーカーを発現していることがわかった。これらの結果から、Hif1αの欠損により線条体抑制性神経の前駆細胞の運命が尾側基底核隆起由来の抑制性神経へと変化したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の研究計画には、Hif1αの欠損により発現が変動する遺伝子の同定と、その遺伝子によるGABA陽性細胞の誘導実験が含まれている。3種類の候補遺伝子の内、Hif1αの欠損により発現が上昇するもの1種については、発現ベクターの作製を進めている。また、発現が減少する2種の内、lncRNAをコードする1種についてはCRISPR/Cas9システムを用いたノックアウトマウスの作製を領域内共同研究として進めている。 GABA陽性細胞の性質、特徴に関する解析はほぼ予定通り進んでいる。これらの理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Hif1αの欠損により発現が変動する遺伝子のGABA陽性細胞の誘導能に関して、以下の研究を行っていく。まず、Hif1αの欠損により発現が上昇するものは、in uteroエレクトロポレーション法を用いた大脳腹側への遺伝子導入を試みる。発現が減少するものは、ノックアウトマウスの作製が完了しだい組織学的な解析によりGABA陽性細胞の過剰産生を確認する。また、GABA陽性細胞が抑制性神経として機能していることを接線方向への移動やシナプス後膜におけるGABA受容体の発現により解析する。
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Research Products
(1 results)