2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞のターニング応答に関する数理動態解析から網羅的解析へのアプローチ
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological signaling networks based on mathematical science |
Project/Area Number |
17H05992
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤井 哲 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20500367)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 数理モデル / 適応応答 / ターニング |
Outline of Annual Research Achievements |
走化性シグナルやそれにともなう細胞動態の理解には、その非自明さゆえに、数理モデル解析と実験解析との深い連携が必須である。細胞運動のモデル生物種である細胞性粘菌や好中球様HL60細胞の研究進展から、Ras, Racなどの低分子量Gタンパクが、フィードフォワード制御を受けることで、誘引物質の時間、空間的な違いが先導端の形成につながっている状況証拠が浮かび上がってきている。しかしながら、受容体直下のシグナルとアクチンフィラメント形成の間には依然として大きなギャップがある。本研究では、受容体直下のCdc42, Rac, Ras, PI3Kなどの因子が、刺激変化の時定数や濃度レンジの情報を選択的にかつ時間順序をもって伝え、これによって細胞のターニング行動が実現している実態の解明にむけて、マイクロ流体デバイスを用いて、様々な時間スケールで向きや位置を変化させ、既存の刺激導入デバイスでは分離困難であった選択的なシグナル応答を、ライブセル測定から解析した。具体的には、ヒト好中球様HL60細胞にたいして、走化性誘引分子fMLPの濃度プロフィールを高い精度で時空間的に変動、細胞運動と、先端形成をになうCdc42の活性化動態をCdc42-Raichuを用いた生細胞測定から定量的に解析した。一山型の進行波刺激へのHL60細胞の応答の解析から、伝播速度の中間的な時間スケールにおいて波の前側でのみ前進する特性が明らかになり、このことと関連して、細胞性粘菌の倍変化応答を特徴づけることで、Cdc42活性化応答の適応性との関係を数理モデルからの予想と比較しながら解析した。また好中球と細胞性粘菌のそれぞれでみられる類的的なターニングの様式の違いを理解するために、細胞形状の動態解析と数理モデルの定式化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
顕微鏡ベースの実験解析は予想以上の進捗かつ重要な展開があった一方で、プロテオミクス系とつなげる実験セットアップは、技術的な理由と人的資源の制限上で計画通りに進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ターニング応答と細胞内の先導端シグナルの時空間動態の関係は非自明であり、これについての仮設構築のための概念的モデルの必要性を深く認識するようになった。このため、2年目では、細胞の先導端形成と極性形成に関わるシグナルダイナミクスのミニマルな枠組みを定式化し、これと形状変化を連立させた方程式系の振る舞いと、実データとの比較をすることで、必要となる実験解析の糸口を得ることを計画する。
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