2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の生存と死を決定する制御システムの数理モデル化
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological signaling networks based on mathematical science |
Project/Area Number |
17H06002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 宏明 京都大学, 医学研究科, 助教 (90738006)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | NF-kBシグナル / LUBAC / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
TNF-α等のデスレセプターを介する刺激は細胞の生存を促すNF-κBシグナル活性化に加え、細胞死を誘発する相反したシグナルが伝達される。NF-κBは免疫応答や炎症反応、抗細胞死など多彩な細胞機能を制御する転写因子であり、異常活性化はガンやリウマチ、アレルギー疾患に、活性低下は細胞死を引き起こし肝ガンや皮膚炎等の疾患発症に関与する。そのため、NF-κBシグナルは活性化因子、抑制因子による緻密な制御下にあり、その複雑な制御機構を理解し、動態をシミュレーションすることは、細胞の挙動だけでなく疾患の病態予測につながると考えられる。これまでに所属研究室では、世界に先駆けて直鎖状ユビキチン(Ub)鎖を選択的に生成するLUBACユビキチンリガーゼを同定し、NF-κB活性化に関与することを報告した。LUBACの特記すべき点は、NF-κB活性化因子であると同時に、NF-κB活性化を負に制御する二つの脱Ub酵素CYLD、OTULINと特異的に結合し、NF-κBシグナルを適切な活性化に導く点である。本年ではLUBACによる緻密なシグナル制御機構のシステムを明らかにするために、LUBAC、OTULIN、CYLDの欠損細胞を作成し、TNF-a刺激によるIKK複合体の活性化をキナーゼアッセイにより評価した。その結果、OTULIN欠損細胞とCYLD欠損細胞ではIKK活性化の度合いが異なること、つまり両脱ユビキチン化酵素は異なる様式でシグナルを制御することを明らかにした。またそのメカニズムを探索するために、数理モデルの骨組みを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
欠損細胞を作成する細胞の選定を長く行っていたため、予定よりやや遅れている。また、作成した欠損細胞では当初予想していなかった明確な表現型の違いを見出している。実験による実測データの取得と得られた結果を数理モデルに還元し、実験と数理モデルの両方向よりメカニズム、意義を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作成した欠損細胞で明確な表現型の違いを見出している。これまではIKK活性化を評価してきたが、TNF受容体に生成される直鎖量、TNF受容体に集積するタンパク質量を今後評価し、実測データを取得する。得られたデータを作成している数理モデルに還元し、数理モデルをより洗練したものにすると共に、数理モデルよりTNF受容体のシグナルをより深く理解する。
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