2017 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルバイオロジーを基盤としたシグナル伝達可視化・制御技術の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological signaling networks based on mathematical science |
Project/Area Number |
17H06005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀 雄一郎 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00444563)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PYPタグ / マイケルアクセプター / ハロアセチル基 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の標識反応に伴い蛍光特性が変化するプローブは、遊離プローブの洗浄操作無しで、迅速かつ高いシグナル/バックグラウンド比でタンパク質をイメージングする優れたツールとなる。これまでの研究で、我々は、PYPタグというタグタンパク質と合成蛍光プローブを利用したタンパク質標識技術を開発してきた。PYPタグは、チオエステルを反応基として持つプローブと反応する。本研究では、PYPタグに対して新たな反応基で反応するプローブを開発し、高精度・高S/N比でタンパク質を標識し蛍光強度が上昇するプローブを開発した。反応基としては、マイケルアクセプターとハロアセチル基を用いた。マイケルアクセプターの場合は、PYPタグとの通常の反応基であるチオエステルの代わりに、Cysによるマイケル付加反応を受けるα,β-不飽和カルボニルをPYPリガンド(ジメチルアミノクマリン)に導入した分子を設計・開発した。その結果、PYPタグと反応させたところ、短波長側に吸収ピークが観測されたことから、プローブとPYPタグはマイケル付加反応により結合したと考えられた。また、ハロアセチル基の場合は、脱離基としてクロロ基を用いた場合、反応速度、安定性、及び蛍光強度増大度が総合的に優れていた。一方、フルオロ基やブロモ基を用いた場合は、反応性が低いことや安定性が低いことが問題となった。そのため、生細胞イメージング実験には、クロロアセチル型プローブを用いた。実際にこのプローブを用いて生細胞中のタンパク質を特異的かつ迅速にラベル化・イメージングすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した通り、PYPタグのリガンドの反応基であるチオエステル以外のものを探索し、複数種の反応基がPYPタグを反応することを見出した。なかでも、ハロアセチル基は、反応速度や安定性及び蛍光強度増大度が優れていて、極めて実用的なプローブであった。そのうえ、PYPタグを細胞内に発現させて、プローブを添加すると、数分以内に蛍光が観測され、極めて迅速にイメージングが可能であった。また、長時間のイメージングにも耐え、光安定性も高く、応用性・汎用性の高いプローブであることが分かった。以上の結果から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、PYPタグ標識技術を用いて、シグナル伝達を制御する分子を開発する。Wnt経路を標的として、選択的にGSK3bを阻害できるシステムの構築を行う。また、シグナル伝達活性化とともに、タンパク質が分解される経路につき、その分解を生細胞中で可視化する技術を開発する。本年度にPYPタグのリガンドとして用いたジメチルアミノクマリンをベースにしたプローブにより、タンパク質の分解を可視化する。これらの開発を通して、シグナル伝達の制御と可視化を行う技術開発の展開を進めていく。
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Research Products
(4 results)