2017 Fiscal Year Annual Research Report
キナーゼ間クロストークの解明へ向けたキナーゼドメイン間相互作用の構造基盤の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological signaling networks based on mathematical science |
Project/Area Number |
17H06013
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小橋川 敬博 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (90455600)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | チロシンキナーゼ / ダイマー / キナーゼドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
受容体型チロシンキナーゼは、ホモ2量体形成を基軸としてキナーゼドメイン同士が近接し、互いにリン酸化し合うことで活性化される。受容体型チロシンキナーゼの一種である線維芽細胞増殖因子受容体 (FGFR) にはFGFR 1~4の4種類がある。これらのうち、FGFR1~3についてはホモ2量体形成を介して活性化されることが明らかにされていた。一方、FGFR4についてはFGFR4とのホモ2量体形成では活性化されず、FGFR1~3との間のヘテロ2量体形成を介して活性化されることが2008年にKwiatkowskiらによって明らかにされた。本研究課題の目的は、FGFR1とFGFR4の間のキナーゼドメイン間ヘテロ2量体構造、およびFGFR2、FGFR3のホモ2量体構造を解析し、キナーゼドメイン間相互作用面を比較することでFGFRファミリーの活性化機構に関する知見を得ることである。 最初に、FGFR1とFGFR4のうち「どちらのキナーゼが」、「どちらのキナーゼを」リン酸化し活性化するかについて明らかにする必要がある。そこで、キナーゼ活性を欠失したFGFR1およびFGFR4を基質として、in vitroのリン酸化実験を行った。その結果、FGFR4がFGFR1をリン酸化し活性化するのではなく、FGFR1をFGFR4がリン酸化し活性化することを明らかにした。次に、キナーゼ活性を欠失したFGFR1に対して変異を導入したタンパク質を基質として用いたリン酸化実験を行った。その結果、これまでに明らかにしていたFGFR1-FGFR1間のキナーゼドメイン間ホモ2量体構造と、FGFR1-FGFR4の間のヘテロ2量体構造が類似することを示唆するデータが得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に推進していると言える。FGFR1-FGFR4キナーゼドメイン間ヘテロ2量体の構造情報の取得を目的として、Cys変異体を用いた架橋実験を試みていた。しかし、FGFR4のCys変異体の多くについてタンパク質の性状が悪化し、十分な数の構造情報を取得することができなかった。そこで、キナーゼ活性を欠失したFGFR1を基質として変異を導入し、これを用いたin vitroのリン酸化実験を先行して行うことで、以前に報告したFGFR1-FGFR1間のキナーゼドメイン間ホモ2量体構造の相互作用面と同様であることを示唆するデータが得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究により、FGFR4のキナーゼドメインがFGFR1のキナーゼドメインの活性化ループのチロシン残基をリン酸化すること、また、FGFR4とFGFR1のキナーゼドメイン間ヘテロ2量体構造が、これまでに報告しているFGFR1のキナーゼドメイン間ホモ2量体構造と類似していることがin vitroのリン酸化実験により示唆された。FGFR1とFGFR4の間で、相互作用部位周辺で異なるのは1残基だけである。この残基を入れ替えた実験を行い、この残基のFGFRファミリーのチロシンキナーゼの活性化における役割について、in vitroのリン酸化実験による生化学的観点から、さらには、NMRを用いた構造生物学的観点から明らかにする。また、FGFRファミリーの相互作用面のアミノ酸がVEGFR2においても保存されていることを確認している。そこで、VEGFR2を調製しリン酸化実験を行うことで、キナーゼドメイン間相互作用面の保存性とキナーゼドメインの活性化の関係を明らかにする。
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