2017 Fiscal Year Annual Research Report
人工知能と神経基盤の相互参照アプローチによる視覚-価値変換機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Correspondence and Fusion of Artificial Intelligence and Brain Science |
Project/Area Number |
17H06033
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
近添 淳一 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 准教授 (40456108)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 個人最適化 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題においては、未だ明らかにされていない、価値変換処理の神経機構の構造を探るために、ニューラルネットワークモデルを利用する。具体的には美術品オークションのデータベースから取得した大量の取引結果と画像の情報を用いて、多層ニューラルネットワークに画像と価格の関係を学習させ、視覚-価値変換の数理モデルを作成した。次に、経済活動を模したオークション課題において、被験者が入札価格を決める際の脳活動を機能的MRIによって計測した。今後、作成した人工神経回路に機能的MRI実験で用いた視覚刺激(美術品画像)を入力し、各階層においてこれらの刺激がどのように表現されるかを推定する。さらに、これらの視覚刺激間の類似度を各階層で計算し、これと脳活動の空間的パターンの類似度との対応を調べる。脳活動の類似度は、脳内の各領域で個別に求めることができるので、申請者が開発した表象類似度分解を適用することにより、多層ニューラルネットワークの各階層と対応する脳領域を同定することができる。さらに、実験的に計測した脳活動のデータと、被験者の回答した美術品の主観的価値の情報を用いて、視覚-価値変換を行うニューラルネットワークの構造を修正し、被験者個人の神経機構の構造に近づける。特に、人工知能と人間の神経基盤の間での情報表現の乖離を最小化し、新規の刺激に関しても、個人の嗜好を模倣した反応(価値評価)を行う人工知能を作成する。さらに、被験者間で脳内情報mapの統合を行い、被験者間で共通する視覚-価値変換の神経基盤を同定するとともに、個人に最適化された人工知能を結合させて、標準的個人の反応を出力する人工知能を作成することを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、画像認識における代表的モデルであるVGG16をベースにして、これに美術品と価格の関係を学習させる転移学習を行うことで、画像と価格の関係を推定する一般的人工神経回路(general artificial neural network)を作成した。学習に用いるデータは、美術品オークションを行うwebsiteにおいて実際に取引の成立したものの中から5000ドル以下のものに限定した(test datasetと含め計40000)。これにより、有名作家の作品はほぼ除外され、解析の対象となるデータの多くは、無名作家またはローカルな作家に限定された。さらに、30人の被験者を対象に機能的MRI実験を行い、美術品の画像の価値評価を行う際の脳活動のデータを取得し、この実験における行動データに基づいて、視覚ー価値変換回路の個人最適化を行った。これにより、半分の被験者で個人の嗜好を推定する人工神経回路の作成に成功した(r > 0.31, p < .05)。今後は、このパフォーマンスを、脳機能イメージングの情報を取り込むことによりどの程度改善できるかが重要なポイントとなる。脳機能イメージングデータの前処理は終了しているが、「主観的な価値基準に基づいて油絵を評価する」という課題自体が複雑なため、脳活動のパターンも複雑なものになっている。まずは標準的な解析手法(回帰分析)による脳活動推定を行い、その結果に基づいた解析を進めるが、これに加えて、脳活動推定においてより複雑なモデル(Singh et al., in preparation)を適用することも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、機能的MRIデータを使って、人工神経回路の個人最適化を進める。具体的には、機能的MRI実験に用いた全ての視覚刺激の組み合わせにおいて、刺激間の情報表現の違いを、類似度行列の形でそれぞれの階層で計算し、これと脳活動の空間的パターンの類似度行列との対応を調べる。この手続きにより、視覚-価値変換器の各階層の情報表現が脳内のどの領域の情報表現に対応するかを同定する。さらに、実験的に計測した個人の脳活動のデータと視覚-価値変換器の間で情報表現が類似するように、視覚-価値変換回路のパラメータを修正する。このようにして作成された視覚-価値変換器は、個人の嗜好と脳活動を反映して、未知の刺激に対しても、その個人と類似した価値判断を行う機能を獲得することが予想される。以上の計画により、新規の刺激への反応(スキャナ外にて取得した美術品に対する主観的価値のデータ)をできるだけ正確に予想する、各被験者の嗜好と脳内情報表現を模した人工知能を作成する。 最終段階では、個人にフィッティングした人工知能とその各階層に対応する脳内情報mapの被験者間での統合を行う。脳内情報mapの被験者間統合には、機能的MRI研究で通常行われる集団解析の手法を用いる。具体的には、各被験者の脳内情報mapを標準脳に投射後、脳内の各画素(voxel)において、各階層毎に計算した脳内情報量の値を集団解析にかけ、被験者間で共通する視覚-価値変換の神経基盤を同定する。人工知能の統合においては、個人毎に作成した人工知能からの出力を相加平均また相乗平均して出力とする、アンサンブル分類器を作成する。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Abstractness of value representation in orbitofrontal cortex2017
Author(s)
T. Yoshimoto, J. Chikazoe, S. Okazaki, M. Sumiya, H. K. Takahashi, E. Nakagawa, T. Koike, R. Kitada, S. Okamoto, M. Nakata, H, Kosaka, T. Yada, N. Sadato
Organizer
The 47th annual meeting of Society for Neuroscience
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[Presentation] State-dependent and -independent food representations revealed by multivoxel pattern analysis2017
Author(s)
T. Yoshimoto, J. Chikazoe, S. Okazaki, M. Sumiya, H. K. Takahashi, E. Nakagawa, T. Koike, R. Kitada, S. Okamoto, M. Nakata, H, Kosaka, T. Yada, N. Sadato
Organizer
第40回日本神経科学大会
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