2017 Fiscal Year Annual Research Report
正と負の意志の動的平衡を担う神経活動の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Creation and Promotion of the Will-Dynamics |
Project/Area Number |
17H06043
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
人羅 菜津子 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (40762191)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経科学 / 情動 / 記憶・学習 / カルシウムイメージング / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある行動を起こすべきか否かは、快情動が原動力となり行動を起こそうとする「正の意志」と、不快情動によって行動を抑制する「負の意志」のバランスによって決定すると考えられる。ウィルダイナミクスの神経基盤を解明するためには、快・不快情動が状況に応じてどのように切り替えられて行動を制御するのかを解明する必要がある。そこで、報酬刺激と嫌悪刺激が共存する葛藤状態において、正と負の意志のバランスを調節して行動を制御する神経回路メカニズムを解明することを目的として研究をおこなった。 これまでに、正と負の意志のバランスを研究対象とするための行動実験系(葛藤試験)の立ち上げを完了した。食餌制限下のマウスに対して、実験環境でスクロース水(報酬)が得られることを学習させた。報酬学習の成立後、実験環境で電気ショック(嫌悪刺激)が与えられることを学習させた。食餌制限の程度、嫌悪刺激の強度・頻度などを調節することにより、マウスがスクロース水を舐めに行ったり行かなかったりする葛藤状況を成立させた。また、自由行動下マウスの複数の脳領域から神経活動を同時に観察するためのマルチサイトファイバーフォトメトリー法の確立が完了した。アデノ随伴ウイルスベクターを用いて神経回路選択的にカルシウム蛍光センサーであるGCaMP6を発現させ、脳内に埋め込んだ光ファイバーを介して励起光照射と蛍光検出をおこなった。同手法を用いて、葛藤試験を遂行中のマウスから神経回路活動をリアルタイムで記録した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ファイバーフォトメトリー法による葛藤試験中の神経回路活動記録を進めている。行動選択と相関する神経回路活動を観察することに成功しており、研究の進捗状況はおおむね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
フォトメトリーシグナルのより詳細な解析により、葛藤行動のどのタイミングでどの神経回路が活性化するかを明らかにする。さらに、光遺伝学的手法により神経回路活動を操作し、回路の活性化、および、不活性化が葛藤行動に与える影響を明らかにする。
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